交流掲示板 【MHWI】
🐾 古龍観測隊 雪山支部
募集ハンター:【大人】 チャットの使用:【設定なし】
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1
名前:🍀あたる【K】
投稿日:2020-08-20 13:44
ID:R51T65Y6
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『古龍観測隊 雪山支部 叙事詩』 著者 リタ隊員さん
[ もくじ ] >>981
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-21 23:56
ID:bpVzerGo
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第一話 はじまりの雪
季節は秋。山々が赤や黄色に色づき始め、朝晩は少し肌寒いくらいだ。そして最近の異常気象が不思議な光景を作り出していた。紅葉に彩られた山の山頂は雪で白く染まっている。まだ雪が降るのに3ヶ月は早いこの時期に雪が降ったのだ。
俺の名前は隆。
メインで扱う武器はガンランス。自他共に認めるガンサーだ。性格は自分でも真面目だと思う。ゆえに最近気苦労が絶えない。
お気に入りのスキルは耳栓。猫に小判、鬼に金棒、銃槍に耳栓だ!耳栓は火力、これはガンサーなら常識である。俺が今所属している部隊は古龍観測隊雪山支部。主にギルドから依頼を受けて雪山および氷雪地帯に住むモンスターの生態系を調査する。隊の名前に古龍とついてはいるが調査対象は古龍から環境生物、大型モンスターの討伐や捕獲、鉱石や植物の調査、調達まで多岐にわたる。稀に個人のモノ好きなコレクターからレア環境生物の捕獲を依頼されるくらいか。以前シルキーモギー捕獲を頼まれた隊長は2週間雪山に通ったが見つからず
『いねーし!そんなモギーいねーし!都市伝説じゃん!』
とキレていた。翌日副隊長が明方向かったところ、あっけなく捕獲。隊長は
『チチチ、チートじゃん!絶対チートじゃん!』
と激昂していた。
冬になれば寒さは一層厳しくなるが美しいオーロラの下で観測をしたり、調査の帰り道にスノーフィートを装着し雪山を滑って降りてくるといったいろんな楽しみもある。
我が家の小さな総司令がオーロラを初めて見た時、目をキラキラさせながら
『ねえねえ!なんでお空が光ってるの!?』
『なんで動いてるの!?』
『オーロラさんは生きてるの!?』
などいろんな質問をされて困った。
控えめに言って天使である。
その天使の質問に答えれるようオーロラについて資料を読みあさったものだ。
そんな事を思い出しながら職場で装備の整備をしていると、扉が開き1人の青年とオトモが入ってきた。青年が俺に気づき、オトモが駆け寄ってくる。
『あ!隆さん、お疲れさま♪』
『ニャー!』
『お疲れ様です、隊長』
『いやー、久しぶりに本部に行ってきたけど、なーんかカタッ苦しくて苦手なんですよねアソコ』
と苦笑いする彼の名前は【あたる】。この隊の隊長にして隊の顔である。俺より年は若い。気さくで誰にでも好かれる好青年だ。たまにぶっ飛んだユーモアをかましてくる。そして生粋のクシャルダオラ好きで重ね着研究家。メイン武器はなく、どの武器でもそつなく扱う。ちなみにオトモの名前は【ももちゃん】。我が隊のマスコット的存在だ。以前本部の会議にて、あたる隊長がオトモダオラ導入を熱弁していたところ、ももちゃんにウルムーネコ肉球(ハンマー)で後頭部をどつかれ、見事に超会心とKO術、個人的逆恨みが発動し気絶。そのままアイルー達に荷車で運ばれ、事務所に雑に放り投げられた過去を持つ。しばらくして目を覚ました隊長は
『なんだ夢か…』
と記憶を無くしていた。なお、ももちゃんはその件で上層部の賞賛を受け2階級昇進。今では隊長より階級が上である。
『隊長職は大変ですよね。板挟みですから』
『隊の皆んなはいい人ばかりなんだけど、上が無理言ってくるからなぁ』
『お疲れ様です。なにか俺に手伝える事があったら言ってください!』
『ありがとうございます!あ!隆さん、明日のクシャルダオラ調査任務なんだけど…無くなっちゃったんだ…』
と少し悲しい表情をしたあたる隊長は、その経緯を話し始めた。続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-21 23:57
ID:bpVzerGo
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第二話 ももちゃん(と俺)の苦労
クシャルダオラの調査任務が無くなった理由は予想通りだった。季節外れの積雪により、山の生態系に異常が生じてないか急ぎ調査してくるようギルドから緊急依頼を受けたのだ。
古龍観測隊雪山支部、本来なら渡りの凍て地や導きの地の氷雪地帯、【永久凍土】と言われる1年を通して雪や氷で覆われた地域での調査、観測が仕事である。しかし、俺たちが生活する大陸にはちゃんと四季があり、【それ】以外の場所では春には花が咲き誇り、夏には新緑が生い茂り、秋には紅葉で彩られ、冬には雪が降る。そんな一般的に四季が流れる季節に、降るはずのない雪。その山の調査に打ってつけだと雪山に長けた俺たちに白羽の矢がたったのだ。『ああー!1ヶ月ぶりのダオラたんだったのにいいぃぃぃー!!!』
と悔しさを露わにする隊長。ダオラたんて…
『隊長楽しみにしてましたもんね』
『ホントですよ!耐寒装備も…(チラ)倉庫から引っ張り出してこなきゃ…(チラ)いけないしさ。まぁ…(チラ)ついでだったからいいけど…(チラ)さ』ついで?
隊長は愚痴をこぼしつつも、およそ今回の調査には使わないであろうデカい鎧兜と耐寒装備を自分のロッカーにしまっていく。…ん?なんか作業しつつ、たびたび指を交互に組んだ両手を前に突き出し、ポーズを決めているように見える。しかもこちらをチラチラうかがっている。
………ハッ!これはいつものアレだ!今日の重ね着気づいてアピールだ!女子か!
隊長は全身金色の鎧兜に身を包み、髪は青緑に染めてきている。そして独り言で
『(上層部のヤツらにオーロラエクスキューションしてぇ)』(チラ)
と小声で呟いている。俺は空気が読める男。ここで俺がやるべき事はひとつ
『た、隊長、今日のコーディネートカッコいいでs『わかる!!!???』
すごい反射神経だ。被せてきた。しかしお預けダオラで沈んでいた表情は輝きを取り戻し…たどころではない。目ん玉閃光弾だ。
『いやー!さすが歴戦の隆さん!目が肥えてらっしゃる!実はこれ昨日徹夜で考えた聖闘士星矢のカミュのコスプレなんです!気づいちゃうんだもん!これに気づいちゃうんだもん!』
『そうなんじゃないか…って思いました…』
『やっぱわかる人にはわかるんだなぁ!うんうん!聖闘士星矢最高!カミュ最高ですよね!』
『そ、そうですね』
胃が痛くなってきた。まぁ隊長の機嫌が治ったんなら良しとしよう。
『隆さん!隆さん!実は、これ偶然なんですがね、いや偶然、耐寒装備を探してたら、偶然アルデバラン装備も発見しちゃって!偶然もここまで重なると必然ってヤツ!見ます!?』
撤回する。特大の地雷を踏んだようだ。
『ア、アルデバランは以前拝見しました…』
『あちゃー!そうでしたっけ!?まぁそーゆーことでも見ます!!??』
やはりこうきたか。なにせさっき耐寒装備を引っ張り出してくる事を【ついで】と言ったのだ。つまりアルデバラン装備を引っ張り出してくる事がメイン。あとはわかるな?
『…ハイ、ミタイデス』
『了っ!解っ!です!ですです!ちょっと待ってて!』
と嬉々として着替えだす。
胃腸薬、まだ家にストックあったっけ?
ふと、ももちゃんを見ると死んだ目の無表情で隊長を見ていた。呆れたような諦めたような、それはもう感情豊かなオトモがする表情ではない。音にすると(スン…)もしくは(チーン…)か。
『(ももちゃん!ダメだよその顔は!)』
『(ニャッッッッ!?)』
ハッと我に帰ったももちゃんに
『(君も大変だな)』
可哀想になって頭を撫でてあげると、目を細め気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らす。
『ニャ〜』
膝の上にのってくるももちゃん。うん。可愛い。ウチの天使には敵わんがな。
あたる隊長の着替えが終わるまで、ももちゃんと戯れているとバンッと勢いよく扉が開いた。続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-21 23:58
ID:bpVzerGo
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第三話 縁起物
『たーだーいーまー♪』
扉を器用に足で開け、こぼれんばかりの笑顔で両手いっぱいにお菓子を持った女の子が入ってきた。彼女の名前は【あちりんご】。皆んなからは【あち】と呼ばれている。この隊の副隊長だ。ムードメーカーで彼女がいると場がとても和む。性格はとても明るく、笑顔が可愛い。ただ明るいだけでなく、クエストや調査後にフィールドの探索、鉱石や特産品などの採取に向かう勤勉さを併せ持つ。各地域の知識はフィールドマスターに匹敵する程だ。メイン武器はライトボウガン。笑顔が絶えない彼女だが、俺は彼女の恐ろしい一面も知っている。
『お疲れ様です、あちさん』
『隆さん、ただいまー♪って隊長はなんでアルデバラン?w』
『あち、おかえり!これには深い訳があってね!』
と一連の浅過ぎる訳を説明する隊長、笑顔で見事に聞き流すあちさん。適度に相づちを入れながらひとしきり隊長に喋らせ、満足させた瞬間を見計らって話題を変える。隊長の扱いは完璧である。
『そういえば物資補給売場からお菓子買ってきたのー、秋の新作だって!アタシのおごりー♪皆んなで食べよー♪』
『やったー!あち、ありがとー!』
『ニャー!』
『…………ありがとうございます』いろんなお菓子を開けて広げ、各々口に運ぶ。甘い系のチョコレート菓子から、しょっぱい系のポテトチップ、お煎餅まであるな。あ、この生ハニーキャラメル美味しい!ねっとりとした舌触り、口の温度で溶けていくキャラメルは甘いながらも少し香ばしく、それでいて角がないほろ苦さもある。舐めているとハチミツのまろやかな甘さが奥から出てきて、口の中で見事に調和する。これは美味しい。今度の調査に持っていこうかな。いやウチの天使に買っていくのが先か!あとで買いに行こう!喜ぶぞ!
皆んなでお菓子を食べていると、あちさんがバッグから何やら桐箱を取り出した。大きさは縦横15センチほどの正方形。高さはあっても5センチくらいだ。開けると白い布で綺麗に包まれた何かの皮?を隊長に見せる。ももちゃんがクンクン匂いを嗅いで、ニャーとひと鳴き。何かわかったのかな?
あちさんが少し顔を赤らめながら
『隊長のために手に入れたのー!子ダオラちゃんの脱皮した抜け殻!すっごいレアなんだよー♪』
『マママ、マジ!!??これが噂の!?』今ちまたでは財布の中にクシャルダオラの抜け殻を入れるとお金が貯まるというジンクスが流行っている。これは東の国から伝わったもので、あちらでは蛇の抜け殻だそうだ。蛇は龍の化身として祀(まつ)られ、龍の力が金運に良いと噂になった。それがこちらに伝わって、どこぞの誰かが
【じゃあ龍の抜け殻入れちゃえば良くね?】
となり、脱皮する龍として知られる古龍のクシャルダオラの抜け殻に至ったのだ。
抜け殻の中でも、成熟していないクシャルダオラの抜け殻は元々レア素材であり、このジンクスのせいも相まって入手困難な超レア素材として高値で取引されている。この抜け殻を除くクシャルダオラの素材で、今現在1番高値で取引される
鋼龍の宝玉が買取額12000z
に対し
子ダオラの抜け殻は24000z
その差は倍である。ちなみに隊長はこの値段を知らないし、調べようともしない。小さい事は気にしない性格なのだ。豪快か、はたまた無知か、紙一重である。あちさんはそれを知っている。
『隊長が欲しいって言ってたからーアタシ頑張ったんだよー♪隊長特別価格で譲ってあげるー♪』
『ほ!本当!?いいの!?買う!絶対買う!!』
あまりの興奮に声が裏返るあたる隊長。ダオラ調査ロス直後に欲しかった子ダオラの超レア素材ゲットのチャンスが舞い込んできたのだ。もちろん即決でお買い上げ。桐箱は隊長の元へ。
『ぃやったー!!子ダオラたんゲットォ!これで億万長者だー!!!』
両手で掴んだ桐箱を頭上へ掲げ、歓喜の感情を爆発させ部屋を走り回る。それを笑顔で見守るあちさん。
(チラ…)だからその顔は止めなさい、ももちゃん!
俺はその光景を見て思う。(俺はあのジンクスを絶対に信じない)
続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-21 23:58
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第四話 需要と供給
『そういえばあち!いくら払えばいいの!?』
まだ興奮冷めやらぬ隊長が抜け殻の金額を確認する。
『んー隊長だから特別に30000zでいいよー♪』
『!』
『特別!?ありがとう!ちょっと待ってね!』
特別という言葉を良い意味で捉えたアルデバラン、もとい隊長は事務所に置いてある財布を取りに部屋を出て行った。『…あちさん?あの、アレの金額って…っ!』
『なぁにー?』
笑顔のあちさんの周りに禍々しいオーラがゆらりと立ち上がる。これ以上は立ち入るな!直感がそう叫ぶ!鬼が出た!商人(あきんど)の鬼が!
『金が絡んだ時の副隊長は別人と思え』この隊に入った時先輩が教えてくれた事だ。ちなみにその先輩はあちさんの事を陰で【孔明】と呼んでいる。どこかの国の神話にでてくる智謀、策略に長けた大軍師の名前らしい。『いえ…何でもありません』
『フフフー♪』急いで帰ってきた隊長は財布の中身を確認する、と…表情が一気に曇る。どうやら足りないっぽい。
『ゴメンあち、給料日前で…』
『そっかー。でも大丈夫♪知り合いが32000zで譲ってほしいって言ってたからー、隊長はまた今度手に入ったらねー♪』
『ちょちょちょ、ちょっと待って!わかった!給料日まで待ってくれたら33000z払うから!』
『しょおがないなー隊長は♪特別だからねーフフフー♪』恐ろしい…
あちさんが最初に提示した額は30000z
子ダオラの抜け殻の買取価格は24000z
仮に誰かから25000zで買い取ったとしても
今回の転売で+5000zの儲け
そして給料日前を狙ったであろうこのタイミング
さらには架空の競争相手を創り出して焦らせ
相手の口から+8000zまで値を上げさせる
巧妙!かつ圧倒的周到さである!
そこから俺と隊長の食べたお菓子代を多く見積もって差し引いたとしても+7000z
もはやあの大量のお菓子は隊長が買ったものと言っても過言ではない。いや、タダより高いものは無い、というアレか。まずは与えて恩を売る(押し付ける)のだ。それで信用を得る。
だが…仮に、これはあくまで仮にだが、フィールドマスターに匹敵するあちさんの知識を活用し、調査のついでに自らの手で抜け殻を入手してきたとしたら?そこから俺たちのお菓子代を差し引いたら+32000z!!!笑い(笑顔)が止まらないだろう!
『ありがとう!あちー!』
『隊長とアタシの仲じゃん!喜んでもらえてアタシも嬉しいー♪』
『………。』
隊長は(ええ子や…ホンマええ子やで…)と感極まりハンカチを濡らしている。まぁ、本人同士が納得しているなら、外野が口を出すのは不粋である。というより後が恐いから関わるべきではない。触らぬ孔明に祟り無し、か。
『よぉーし!皆んなに自慢してこよーっと!』
と部屋を飛び出そうとする隊長に
『あ、隊長ー♪それ金運アップの縁起物でねー、いくらで買った、とか言っちゃうと子ダオラちゃんの龍の力が失われるって聞いたよー。気をつけてねー♪』
『マ!マジ!?あっぶねー!やらかすとこだったー!サンキューあち☆』
親指を立ててウインクする隊長。
アフターケアも抜かり無い。
『いってらー♪♪♪』
スキップして出ていく隊長を笑顔で見送るあちさん。ももちゃんがお菓子を名残惜しそうに見てから隊長の後を追いかけていく。もうどちらが旦那様(保護者)かわからんな。
しかし良くも悪くも見事な稼ぎっぷりだった。敵に回してはいけない人だ。俺の視線に気づいたあちさんがフフフと笑いながら言う。『需要とkyo♪u♪kyu♪u♪』
隊長は億万長者になるためのアイテムを手に入れ、散財した。本末転倒とはまさにこの事だ。大切な事なのでもう一度言う
(俺はあのジンクスを信じない!!!)続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-21 23:59
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第五話 美女と野獣
森林支部、火山支部など他の支部に子ダオラの抜け殻を自慢しに行った隊長とお疲れ気味のももちゃんが戻ってきた。たいそう羨ましがられたのであろう、古龍を討伐した時よりも満足した顔をして。
『明日の緊急任務の調査なんだけど、メンバーどうしよっかなぁ』
とお菓子を食べながら隊長が悩んでいる。どうやら晩飯代を浮かそうとしているな。キャンセルになったクシャルダオラの生態調査は、わかりやすく言うと観察だ。
古龍の中でも性格が穏やかと言われているクシャルダオラ、テオ・テスカトル、イヴェルカーナ、ヴァルハザク、ネロミェールはこちらから何もしない限り攻撃してくる事はない。むしろ向こうに合わせれば一緒に【お散歩】もできるくらいだ。
よってクシャルダオラの観察には戦闘がない。隊長とあちさん、ももちゃんで行く予定だったが、今回の緊急任務は4人+オトモ、という異例のパーティを組むよう要請があった。調査を分担して早く終わらせるための特例である。あとオトモの嗅覚と聴覚は調査において非常に役に立つからだ。ちなみにナナ・テスカトリ、アルバトリオン、ミラボレアスは最初から全力で殺しにくる。キリンはその時の気分による。
『隆さん、お願いできる?』
『はい!大丈夫です!』
『もう1人はー?』
『ニャー?』
『んー誰に頼もうかなぁ』
ガチャ、キーッ
『お疲れさまです^^』
皆んなで話していると扉を開けて入ってきた女性が声をかけてくる。
彼女の名前は【リタ】さん。最近我が隊に配属された女性ハンターで、あちさんより年上。落ち着いた雰囲気のお姉さんって感じだ。左側にある口元のほくろがセクシーである。しっかり者の彼女だがどこか抜けている部分もあり、高級お食事券で皆んなに御馳走したかと思えば自分は食べ忘れて、クエスト開始時に慌てている姿はどこか可愛いらしい。メイン武器はヘビィボウガンだが、モンスターによって武器を持ち替えている。
『おかえり、リタさん!』
『おかえりー♪』
『ニャー!』
『おかえりなさい』
『はい、ただ今戻りました。あらあら、こんなにお菓子広げて、少し早いハロウィンパーティーですか?飲み物、いれますね^^』
『『『はーい!』』』『ニャー!』リタさんがいれてくれたのはホットジンジャー。生姜、ハチミツ、砂糖、レモン果汁で作った自家製ジンジャーシロップをお湯で割ったものだ。カップに口を近づけると立ちのぼる湯気が心地よい香りで鼻を刺激する。美味しい上に身体も温まる飲み物で、これからの季節にはもってこいだ。
『ももちゃんは猫舌だから気をつけてね^^』
皆んなに飲み物を配り終えて席に座るリタさんに、ニャー♪と、ももちゃんがお気に入りのお菓子を渡す。ありがとう^^と言って口にする。どう?どう?と覗き込むももちゃん。うん、美味しい^^と言うとイェーイという感じで交互に手でガッツポーズをしながら小ジャンプを繰り返している。見ていると心が和む。本来、オトモはこうあるべきだ。本来なら。『リタさん、明日の緊急任務なんですがお願いできませんか?』
『あらーごめなさい、あたる隊長。明日はアステラの調査団からミラボレアス討伐に参加するよう応援要請を頼まれてるんです…んー、どなたか変わってくださればいいんですが^^』
『ぼぼぼ、僕は元々こっちのメンバーだったんで!外れるわけにはいきませんよね!いやー残念だなぁ!』
『あらあら、それは残念です^^』
そんなやりとりをしているとまた1人クエストからハンターが帰ってきた。
『ただいま帰りましたぞ!いやー腹が減った!』
豪快な口調でガハハと笑いながら現れたのは【おーさん】。ギルドパレスの武器重ね着をした狩猟笛を担いでいる彼は、サポートタイプのヒーラーカリピストだ。彼がいればクエストで仲間が乙る事はない。が、仲間想いの彼は仲間の体力に気を配りすぎて自分の体力を気にしていない癖があり、たまに真っ先に乙る事がある。その都度あちさんが注意すると、ガハハ見とらんかった!スマンスマン!と笑い退けるのだ。年は俺より一回り上で、この隊の最年長だ。ちなみに彼が以前話した、あちさんの事を陰で【孔明】と呼ぶ先輩である。過去に何か痛い目にあったのかもしれない。
『おーかえり♪』
『ニャー!』
『お疲れ様です、先輩』
『お!うまそうなもん食っておるな!ワシも食わせてもらいますかな!』
『どーぞー♪』
『はい、おーさん。飲み物です^^』
『おお!すまんな!有難い!』
そしてゆらりと動き出すデカい鎧
『お疲れさまです!師範!』続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-21 23:59
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第六話 一子相伝
『おお!誰かと思ったぞ!弟子か!』
『はい!師範!』おーさんは数有る狩猟笛流派の1つ
【喰医薬我流】(しょくいやくがりゅう)
の創始者である。言っておくとそんな四文字熟語は存在しない。以前おーさんに聞いたら、なんか響きがカッコイイから!と豪快に笑っていた。読んで字の如く
【医を喰らい我が薬とならん】
機に臨み変に応ずっぽくしたかったらしい。仲間を守る事に重きをおいた流派の1つで、全国に弟子の数は【1】。もう一度言う、【1】。目の前のソイツ!門下生はNo.10までいる事になっているが1〜10までソイツ!が、今はまた違う。
初めは一番弟子と喜んでいたが、いつしか隊長は【設定】を設けるようになった。喰医薬我流は一子相伝で自分は三番弟子。圧倒的な力と強欲を持つ一番弟子と流派の継承と恋人(隊長のなかではあちさんに変換される)をかけて死闘の末勝利した。二番弟子は柔の笛の使い手で流派を継承すると言われたが病死する。ちなみに一番弟子は俺だったそうだ。どこかで聞いた話と思わなかったか?そう、これは隊長が聖闘士星矢にハマる前の話である。そうやって門下生がおーさんの知らないところで増えていって、八番弟子に至ってはスピリチュアルにハマってた時に出来た。8は縁起がいい数字で【あたる】も八画。コレだ!みたいな。そして今では零番弟子である。これについては
『なんか零番って響きがカッコ良くね?』
と中二病の末期症状からきている。師が師なら弟子も弟子である。さらに最近では症状は悪化の傾向にあり、自らの流派【笛吹飲食流】を名乗り始め、流派を乗っ取ろうと画策している。また隊長には強欲ではない純粋なやる気が十分に溢れているからさらにやっかいなのだ。話を戻す。
隊長とおーさんが初めてパーティを組んだのは極ベヒーモス討伐戦。未知の巨大モンスターとの戦いに不安と恐怖で震えていた隊長や他のメンバーにおーさんは
『心配するな!お主らは誰も死なせはせん!』
と鼓舞。戦いの結果は、おーさんの活躍もあって誰一人欠ける事なくベヒーモスを討伐するに至った。その戦い方に感銘を受けて、隊長は弟子入りを志願したのだ。『師範、明日の緊急任務なんですが、お願いできませんか?』
『ふむ、弟子の成長を見るには良い機会だな!ヨシ!ゆくか!』
『ありがとうございます師範!ですが調査任務なので戦闘は無いかもです!』
『そうなのか!?そりゃあ残念だガハハ!』
これで明日山へ調査に向かうメンバーが決まった。隊長 狩猟笛
あちさん ライトボウガン(鉄甲榴弾)
おーさん 狩猟笛
俺 ガンランス
ももちゃん ウルムーネコ肉球+守りの大盾なかなかに珍しい編成である。今回の任務は生態調査なので武器種はさほど問題ではない。例え大型モンスターに遭遇して戦闘になったとしても、俺のガンランス、あちさんの鉄甲ライトは属性、肉質を無視して固定ダメージを与える事ができる。言わば全属性武器。打属性の狩猟笛は基本的に頭を殴っていけばほぼ全てのモンスターにダメージは通るし、スタンも狙える。まあ、この編成でも問題ないだろう。
『しかし長くハンターをやってきたが…うむ、あんなのは初めてみるな!』
と、おーさんが窓から見える景色を見て言う。明日調査に向かう山は紅葉の赤、黄、そして山頂は雪の白。2つの季節が混在していた。改めて見ると不思議な景色だ。
『そーなんだー♪』
『先輩でも初めて見るんですか…』
『うむ、不思議な…いや、異様な光景だな!』
『アンイシュワルダみたいに、あそこには原因となる【ナニカ】が在るのかも知れませんね、フフ^^』
『ヤヤヤ、ヤメてくださいよリタさん!脅かすのはぁ!』
『『『『ハハハハハハハハ♪』』』』
そんな話をしながら、明日の任務に向けて各々が準備に取り掛かる。耐寒のインナー装備に加え、ホットドリンク、携帯食料、観察キットなど必要なものをポーチに入れていく。もちろん、戦闘になる事も考慮して近接武器を扱う者は砥石を。遠距離武器を扱う者は弾薬を忘れない。
準備が終えた事を皆んなで確認し、明日に備えるため今日は早めに家路につく。おっと、帰る前に物資補給売場に行って生ハニーキャラメルとケーキを買ってからにしよう。家族の喜ぶ顔が楽しみだ。そして明朝7時、4人と1匹は調査へと出発した。
続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:00
ID:bpVzerGo
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第七話 異変
生態調査は順調に進んでいた。現在は三合目の観測地点。特に異常は見つかっていない。
今までの調査で標高による生態系の変化は五合目以降と八合目以降。今回調査を行うのは麓、三合目、六合目、九合目、十合目(頂上)の5カ所。調査地点間は翼竜によって移動する。
生態系の変化と言っても、標高に応じて環境生物が変わったり、採掘できる鉱石が違う点くらいか。ただ、同じ鉱石でも標高が高い方が純度の高いものが取れる。純度が高い鉱石は高値で取引されたり、武器の素材として使うと切れ味、耐久性、劣化の早さが変わってくる。その純度に比例してより良いものができるのだ。三合目の調査を終え、翼竜で六合目の調査地点に向かっている時だった。ももちゃんが異変を捉え、その方向を指さし鳴いた。
ちょうど森林限界ラインの標高。木々と岩場が混在した場所の大きな岩陰に【それ】はあった。鋼龍の死骸
俺たちだけでは発見できなかっただろう。ももちゃんお手柄である。
それは一見縄張り争いに負けたであろうもので、体には歯形や鋭利な爪で切り裂かれた無数の傷、深い刺し傷、噛みちぎられてえぐれた箇所があり、ニクイドリによって食い荒らされ骨まで見えている部分もある。腐敗の具合から見て死後5日。ちょうど雪が降った頃だ。『ダオラたん………』
隊長が小さく呟き、目をつむって手を合わせてから、鋼龍の素材を無駄にしないよう剥ぎ取りを行う。使えそうなモノは鱗と爪くらいか。あとは心臓付近(胸の辺り)に鋼龍の宝玉がないか確認する。
すると【龍核結晶】が出てきた!龍核結晶とは古龍の宝玉が何らかの理由で変異したもので、極々稀にしか採取されない超レア素材だ。子ダオラの抜け殻などその比ではない。
宝玉が球体なのに対し、龍核結晶は立体ひし形。トランプのダイヤをイメージすればわかりやすいか。
龍核結晶はその古龍の魂が宿ると言われているが、真実は俺たち人間にはわからない。どうできるのか、何のためにできるのかは未だ学者達の研究テーマなのだ。『ふおおおぉぉぉー!子ダオラたんのお導きじゃあああぁぁぁー!!!』
度重なるダオラサプライズに隊長が発狂する。が、ここは冷静にならねば
『隊長!一旦落ち着きましょう!』
『え!?あ!ごめん!つい興奮しちゃって!』
『まぁ仕方ないな!そんなもん手に入れたら誰でも興奮するわ!良かったな弟子よ!』
『はい!師範!』
『いーなー♪アタシもほしー♪』
あちさんの妖しく目が光る。
だが、本当に冷静にならなくてはいけない。死骸がある、という事は、倒した者がいるという事なのだ。この山は森林支部が管轄する場所。つまり生態系は森林地帯と同じである。その中でクシャルダオラを倒す事ができるモンスターで交戦的なのは怒り喰らうイビルジョー、悉くを滅ぼすネルギガンテくらいか。イヴェルカーナは戦いを好まない習性がある。
辺りを調べてみたが、手がかりになるようなものはなく、皆んなで話し合った結果、どこかで争い、ここまで逃げてきて命が尽きたという結論に至る。
『『『『………………』』』』
が、なにか釈然としない。秋の行楽調査だったのが一変し、パーティに不安と緊張が植え付けられた。向かうは六合目観測地点。何が待ち受けているのか。
続く。
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958
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:01
ID:bpVzerGo
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第八話 お昼ごはん
『いじょーなーし♪』
現在六合目観測地点。皆の不安とは裏腹に調査はスムーズに終わった。森林限界ラインを超えると高山植物は生育しているものの、視界を遮るものはなく見渡しが良い。何か異常があった場合、すぐに見つける事ができるだろう。
この先、七合目までは高山植物のコマクサやタイツリソウが生育し赤いキレイな花を咲かせている。そして、八合目からは高山植物も無くなり、例年通りなら山頂まで岩肌が続くのだが、今年はこの辺りからうっすら雪が積もっていた。六合目の観測を終え、一行は昼食を取る。あちさんがポーチとは別に持ってきた肩がけのバックから取り出したのは、今朝彼女が用意してくれた特製バーガー。
モスの肉を粗めに挽いて、炒めた玉ねぎ、パン粉、牛乳、ニンニクを混ぜ、塩、砂糖、コショウで味を整えて焼く。それを東の国の醤油とみりんという調味料にお酒、砂糖、リンゴジュース、ニンニク、生姜を混ぜ煮詰めて作ったソースにくぐらせ二つに切ったパンにのせる。その上に目玉焼きとたっぷりのレタス。最後に切ったパンではさみ出来上がり。
これがまた美味い!冷めて一層味がまとまったような、パンの小麦の香りにレタスのシャキシャキ感、甘辛いソースの中から肉肉しいパティ、そして嬉しい目玉焼き!次はぜひ出来たてを食べたいものだ。『あち!料理できたんだね!』
『隊長ひどーい!』
『え?』
『あちさん、ホントに美味しいですよ!』
『うむ!調査じゃなきゃあと3つは食いたいぞ!』
『ホントー?エヘヘー♪』
『ちちち違うんだあち!僕は褒めようとして!』
『もう知ーらない!』
ほどよくお腹を満たすと、さっきまでの不安と緊張が少し和らぐ。あちさんのおかげだ。こういうところで【副隊長】はしっかりしているのだ。味気ない携帯食料ではこうはならない。
『お代は一人1000zねー♪あ!隊長は3000zー♪』
『ひぃ!?』
こういうところもしっかりしている。隊長は給料日まで持つのだろうか。
昼食はあちさんの特製バーガーひとつ。正直言うと物足りないが満腹にしてはいけない。万が一戦闘になった場合、動けなくなるからだ。しばらく休憩し、調査を再開するため翼竜で九合目観測地点へ向かう。空から見ても一面雪で異常は見当たらない。降りると積雪は20センチぐらいか。標高と雪により寒くなってきたので各々ホットドリンクを飲む。
九合目の調査も滞りなく終わった。というより調べるものはないと言ってもいいくらいだ。一行は観測を済ませ翼竜で山頂へ向かう。
そして十合目(頂上)観測地点にやってきた時、目の前の光景に言葉を失った。
続く。
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959
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:01
ID:bpVzerGo
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第九話 エンカウント
十合目である頂上は山頂カルデラになっており、少し歪(いびつ)ではあるが円形のくぼみだ。中央は平地で周囲は切り立った壁のようになっている。頂上の断面図は凹。その形が王冠に見える事から、この山は【クラウンマウンテン】と呼ばれている。
『あー良かった!何も無いじゃん!モンスターいるんじゃないかってドキドキしたー!』
『うんー。何もいないねー』
『違います、隊長。何も無い事が異常なんです』
周囲は壁と岩肌の地面が広がっているだけ。一見すると異常は無い。隊長はどういう事?という感じで首を傾げる。『ここには雪が無いんです』
『!!』
この山は火山の噴火によってできたものだが、今は死火山であると判明している。山が熱を持っているわけではないから雪が溶けるという事は無い。あって当然の雪がここには無いのだ。
『どどど、どうして!?』
『わかりません!とりあえず調べましょう!』
『うむ、そうだな。何か手がかりがあるかもしれん』
『りょーかーい♪』辺りを調査するといくつかの痕跡を得る事ができた。地面やきり立った壁には何かによってできた斬り裂かれたような痕やえぐれたような痕があった。そして古龍の血が固まったものや鋼龍の鱗が落ちていたり、この場所で激しい争いがあった事がわかる。
この鱗は五合目で発見したクシャルダオラの可能性が高い。片方はクシャルダオラ、ではもう片方は…そう考えていると風が強くなってきた。山の天候は短時間で急に変化する。この異常気象だ。もしかしたら雪が降るかもしれない。
『みんな!一通り調査が済んだらすぐに下山するね!万が一吹雪になっちゃうかもしれないしさ!』
『そうですね!急いでやりましょう!』
そんなやりとりをしている時だった。バサッバサッと何かが羽ばたく音が聞こえてきた。一行が音の方へ顔を向けるとそこには
鋼龍クシャルダオラ
『ねー隊長、あの子なんか大きくなーい?』
そのクシャルダオラは歴戦の金冠個体よりも一回りデカい。鋼を連想させるその姿は光沢ある白とグレーのグラデーションが美しい。鱗に覆われているが、その下には力を象徴させる筋肉の隆起がはっきりと見てとれる。たてがみのように何本ある角の一部は欠け、全身には脱皮では消えない歴戦の爪痕がある。この個体が弱肉強食の世界を勝ち抜いてきた証だろう。知性を思わせる深く青い瞳、幾重にも重ねたような翼膜は内から外に向けて白から黒へ色を変えて、翼を広げたその姿はどこか神々しい。と同時に思う。アレは危険だと。
『皆さん、なんかヤバい気がしません?』
『奇遇だな。ワシもそう思ったとこだ』以前、温厚な古龍はこちらが何もしない限り、向こうから攻撃してくる事は無いと言った。だが例外がある。その場合、遭遇と同時に即戦闘になる。それは
対峙する古龍が歴戦王だった時だ。
青い瞳がこちらを捉えると、俺たちの心臓が揺れる程の咆哮をあげた。
続く。
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960
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:02
ID:bpVzerGo
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第十話 隆、キレる(表)
『聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない!雪と全然関係ないヤツ来たじゃん!』
逃げ惑う隊長。
情勢は劣勢である。対クシャルダオラを想定した装備、スキルをしていないため近接武器は龍風圧によって近づく事ができない。攻撃ができる部位は頭か尻尾、あとは龍風圧から出た脚の先。だが相手は歴戦王。通常の個体よりも動作が速く、動き回る頭や尻尾にピンポイントで攻撃するのは至難の技だ。そしてサイズが大きいため、その位置も高い。
となると頼みはあちさんの鉄甲ライトか。しかし、あちさんが撃った鉄甲榴弾は龍風圧によってはじかれた。
『うそでしょ…』
この個体の龍風圧は風というより【嵐】と言った方がしっくりくる。他の鋼龍が纏うソレとは明らかに質が違う。まさか鉄甲榴弾すらはじくとは!どうする!?考えている間も容赦なくブレスが飛んでくる。
ぐうぅ!…ガード性能Lv5を持ってしても体力が大きく削られる。このままでは全滅しかねない!どうすれば!?今はももちゃんが設置した大盾カカシのおかげで、こちらにくる攻撃の頻度が低い。この間に打開策を…!すると1人のハンターが何かを決意したかの様に目を見開き叫ぶ!
『弟子よ!このままでは全員殺(や)られる!【アレ】をやるぞ!』
『し、師匠!く!わかりました!』
『まさか【アレ】を使う時が来るとは…ゆくぞ!』
狩猟笛の師弟は隠れ身の装衣を着てクシャルダオラの後方に回り込む。なるほど!喰医薬我流の必殺技みたいなものをするわけだな!喰医薬我流奥義
【ハイド・デュオ・アスクレーピオス】!
(医神の隠密二重奏)!この技は2人の広域ヒーラーが隠れ身の装衣を着用し絶え間なく味方を回復し続けるという無乙の大技。そして隠れ身の装衣は動かなければ装衣ゲージを消費する事は無い。なお2人は満足感Lv3でアイテム消費がほぼ無く、早食いLv3で瞬時に回復する事が可能!おーさんが10年の修行を経て編み出した喰医薬我流の奥義なのだ!
そして彼らはアオキノコ、サシミウオ、回復薬を懸命に飲み食いし始める。
『安心せい(パク)!回復は(モグモグ)ワシらに(ゴックン)任せるんだ!』
『はい(モグモグ)!誰も乙らせません(グビグビ)!』なん…だと…?俺の【理解】が置き去りにされている…とでも言うのか…?
『む!弟子よ!なかなか良い食いっぷりになったではないか(モグモグ)!』
『いえ!まだまだ師匠には敵いませんがね(グビグビ)!』
『フッ、ワシも負けておれん!』
ここでおーさんは実力の差を見せつける。正座し小皿にたまり醤油を用意してサシミウオをお箸で美味しく食べ始めたのだ!あろう事か、わさびをたまり醤油に溶くのではなく、サシミウオの上に適量のせ、より美味しくより素材の味を楽しむ食べ方をしだした!口に運ぶ際は醤油が垂れないよう左手を添える事を忘れていない!この状況下で優雅に!かつ美しく食事ができるのは歴戦のハンターか頭のネジがぶっ飛んだバ◯しかいない!
『く!さすが師匠!ならば僕も!』
おーさんの技を盗み、真似する隊長
『ぐああぁぁぁ!わさびをのせ過ぎたぁ!』
30ダメージ!
『まだまだ修行が足りんぞ弟子よ(パク)!』
すかさず師匠が回復!ブチッ…何かがキレる音がした…ちげーわ!完全に俺の堪忍袋の緒がキレる音じゃあ!こんな時におのれらはぁあ!!!
ド畜生共の元へ走っていって胸ぐらを掴む
『チョ!オマ!ワシら今隠れておる!隠れておるから!』
『隆氏!こっちくんなし!』
『やかましいボケェ!あのバケモノ相手に何しとんのじゃあ!』
すると、俺が2人に絡んでいるところにクシャルダオラの殺人ブレスが見事命中する。
『『『ぎゃああぁぁぁぁー!!!』』』
3人は吹っ飛び、内2名の隠れ身の装衣は解除された。おーさんの10年をかけた奥義は隆とクシャルダオラによって2分で破られる事となった。
続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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961
名前:おー(仮名)
投稿日:2020-10-22 00:03
ID:p5hc1hUQ
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今夜もありがとうございました(^_^)
お客さまもおみえになって、楽しく過ごさせて頂きました♪
今日は特にフレさんも来てくれて、とても嬉しかったです。
また今度よしなにお願いします_(._.)_さて・・・カミングアウトはですね・・・
ありますよ山ほど(^_^;)
ちなみに以下のどれだと思われるでしょうか?1.!放置。観察キットを入手したのは一昨日のことだった。
2.ポーチの並び替え方法を昨日はじめて知った。
3.みらぼーさんの火の玉を笛で打ち返そうとして、回避が遅れて乙った。
4.ショートカット機能が上手く使えない。
5.FFジャンプ抜けで帰ろうとして失敗。隠れようとしてさらに恥をさらした。・
・
・
正解は
・
・
・
みなまで言わないでください
・
・
・
『全部』ですよ(-_-;)注>もちろん、『ねこめし忘れたー』とかは、日常よく知られたことなので含まれておりません。
おかげさまで、燃料もたくさん蓄えられたので
ほどよい金曜日の準備と、物資調達がんばります(^_^)9それではまた(^_^)ノシ
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962
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:04
ID:bpVzerGo
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第十一話 隆、キレる(裏)
『ワシの10年がああぁぁー!』orz
『師匠おおぉぉー!』
情勢は未だ劣勢である。当たり前だ。クシャルダオラは今のところノーダメージ、こちらが身内で潰し合いをしているだけなのだから。いかん!冷静になるんだ俺!このままでは本当に全滅する!何か!何か突破口を見出さなくては!
その時だった。懲りずにまた1人のハンターがカッと目を見開き叫ぶ。
『弟子よ!ここはワシに任せるんだ!』
『し、師匠?』
『お前にはまだ教えておらぬ技がある…あまりにも危険ゆえにな。だが、今だからこそお前に託せる!あとは頼んだぞ弟子よ!』
『し!師匠おおぉぉー!』
本当に大丈夫か!?
おーさんは隊長に全てを託し、不動の装衣を着てクシャルダオラに正面から立ち向かっていった。
正面から!?これは本気だ!疑ってしまった自分が恥ずかしい!おーさん!さっきはすまなかった!俺たちを救うため、玉砕覚悟で突っ込んでいくおーさんに罪悪感で胸が締め付けられる。喰医薬我流『裏』奥義
【インプレグナブル・アスクレーピオス】!
(難攻不落の医神)この技は不動の装衣を着用し、モンスターの目の前で攻撃の的になりつつ味方を回復し続ける、言わば背水の陣。なお、不動の装衣は動かなければ…以下略
『さあ!今の内にヤツを頼む!』
『お、おーさん…な『師匠!』
俺の言葉を遮って、隊長が不動の装衣を着ておーさんの横に並ぶ。照れ隠しをするように鼻を親指ではじき、何かを決意したのような眼差しで言う
『師匠にばかり、良いカッコは…させませんよ』
『弟子よ……ッ…今日の回復薬グレートはやけにしょっぺぇなぁ…』
チビリと回復薬グレートを飲むと、おーさんは目から熱いモノがこぼれないよう天を見上げた。『またかあ!おのれらあ!』
『隆さん!落ちついて!アタシ達がしっかりしないと!』
『そ、そうでした。すみません!』
さすが副隊長。こんな状況下でも1人冷静でいる。
『2人にばかり無茶させられない!隊長とおーさんの事はアタシに任せて、隆さんはクシャルダオラを!』
『はい!……はい?』
何だ?……今の違和感は?
『トリオ・アスクレーピオスー♪』
そう叫ぶと、あちさんは2人を盾にして、しめしめといった顔で秋の新作お菓子を食べ始めた。
『あ♪このマロンチョコパイ美味しー♪』
『え?ワシもひとついい?』
『僕もー!』
お前もかあー!つーか
『おのれは広域つけてねぇから、ただ菓子食いてぇだけだろうが!』
俺の怒号に【なぜバレた!】と驚愕の表情でコチラを見る。逆に!逆になんでイケルと思ったんだよ!どーしてこうなった!このままでは本当にヤバイ!
もしかして皆は生き延びる事を諦めてしまったのか!?もうダメなのか!?そう思いクシャルダオラの方を見る。そこにはまだ歴戦王相手に足掻く者がいた。その小さき戦士はハンマー、ブーメラン、大盾を駆使してクシャルダオラと戦っていた。
続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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963
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:07
ID:bpVzerGo
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>>961 おーさん
こちらこそありがとうございます( ˙꒳˙ )🍀
なんと!観察キットは笑ってしまいましたがw( ˙꒳˙ )w🍀
アイテム並び替えやショートカットは便利ですよ\( ˙꒳˙ )/🍀
わたしはよく「アイテム」をショートカットで使おとして
「コメント」のショートカットを連打する
というカミングアウトを( ˙꒳˙ )🍀
よろしくお願いしますよろしくお願いしますよろしくお願いしますよろしくお願いします…( ˙꒳˙ )みたいになります🍀 -
964
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:11
ID:bpVzerGo
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第十二話 活路
ももちゃんが孤軍奮闘している!ゴメン!ホントにゴメン!このパーティの中で唯一戦えると思われたアタシの徹甲ライトもあの龍風圧によってはじかれてしまった。どうしよう!どうしよう!…ダメだ、頭が働かない。お昼はハンバーガーしか食べてないから脳に糖分が不足してる。持ってきたお菓子食べるスキができれば!
そう思考を巡らせているとおーさんと隊長が不動の装衣を着て盾になってくれる状況になった!ナイスゥ!これで糖分が摂れる!頭が働くようになる!ホントナイス2人!
『トリオ・アスクレーピオスー♪』
ほんの僅かだけど、希望が見えてきたから調子に乗ってしまった!ちょっと反省。ポーチからお菓子を取り出し、急いで頬張る。
『あ!このマロンチョコパイ美味しー♪』
しまった!また思わず口にしてしまった!でも、んんーキタキタ!脳に栄養がキタぞー!『おのれは広域つけてねぇから、ただ菓子食いてぇだけだろうが!』
その言葉にハッとする!ち、違うの隆さん!お菓子は食べたかったけど、これは違うの!
くぅ…でも今はそんな弁解してる場合じゃない。考えろ!考えろ!アタシに何ができるか!攻撃できるのは頭、尻尾、脚。でも頭と尻尾は相当当てづらい。突破口を見つけるため頭をフル回転させる。コレだ!
『ももちゃん!今まで引きつけてくれてありがと!あとは任せて!隊長は撤退の準備を!時間はアタシが稼ぐから!』
『あち…わかった!』
隊長に指示を出すと挑発の装衣を着る、と同時にクシャルダオラは標的をコチラに変え襲いかかってきた。徹甲榴弾はモンスターに着弾後、遅延信管によりおよそ3秒後に爆発しダメージを与える。だが堅い地面や壁に当たった際は遅延が働く事なく着弾と同時に爆発する。そして、爆発の範囲内であればその距離に関わらず固定のダメージ判定がある。
クシャルダオラは噛みつきやブレス、あらゆる行動の際、その大きな体と頭を四本の脚で踏ん張り支えなければいけない。つまり、脚は頭や尻尾に比べて動きが少ない。でも脚を狙って外れた場合龍風圧によってはじかれてしまう。
この2つを考慮して、狙うはココ!脚付近の【地面】!
地面に着弾し爆発でダメージをくらったクシャルダオラは鬱陶しそうにする。
撤退のチャンスを作れるとすれば怒り状態になるまで。周りの地形を確認し、攻撃を継続しつつ壁の方へ誘導する。
背後の壁まで3メートル、前方にはクシャルダオラ。この状況ならブレスは無い!キタ!噛みつき!
後方へ高く、そして勢いよく飛び、宙返りして壁に着地!それと同時に壁へ起爆榴弾を打ち込み、反動を利用して右前方へ飛び前転後回避装填!そこからクシャルダオラの方へ向かって走りながら左前脚、左後脚付近の地面に徹甲榴弾を撃つ!爆発のダメージにより一瞬だけ怯んだのを確認し腹の下、後脚の前のわずかな龍風圧の隙間を地面スレスレまで体を逸らしスライディングでくぐる!
数字の【4】を下から一筆書きしたかのような動きに、クシャルダオラは目だけで追っていたが、ハンターを捉えるため体を右へ向けた。その瞬間、目の前で閃光弾が強い光を放つ!
怒涛の展開に大きく怯むと、頭部右側にすかさずクラッチで張り付く!クロー攻撃で一回方向を修正し、起爆榴弾の打ち込まれた壁に向かってぶっ飛ばす!
『いっっっけえぇぇー!!!』続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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965
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:11
ID:bpVzerGo
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第十三話 千変万化
あちさんがクシャルダオラを翻弄し大ダウンを奪った事に感動した。それと同時に何も出来なかった自分が情けなかった!今はそれどころじゃない!わかってる!でも、そう感じざるを得なかった。
『あち!こっち!』
壁に誘導した際、俺たちのいる場所から離れてしまったあちさんがこちらに走ってくる。その後ではクシャルダオラが…もうダウンから復帰しようとしている!バカな!早過ぎる!…いや、でも閃光弾の効果があるはず。そう思った時、クシャルダオラは首をぐるりとこちらに向け、続けて体の向きを変える。
閃光耐性…。目の前にいるのは歴戦王だ。弱肉強食の世界を勝ち抜いてきた。当然、戦ってきたのはモンスターだけであろうはずがない。今までに何千何万のハンターと対峙し、その中で毒や閃光を受け続けてきたのだ。その上でこの個体は勝ち抜いてきた。耐性があって当然だ。甘かった…!
そんな事を考えていると、クシャルダオラは四肢を大地に固定し口を開けた。開いた口の隙間にバチッバチッとまるでエネルギーを圧縮させたような光の球体が現れる。その周りには赤い帯状の光が何本も揺らめく。その色は赤から緑に変わったが、またすぐ赤に戻った。なんだ…アレは?【ねえねえ!なんでお空が光ってるの!?】
え?…いや、そんな…まさか!?理解が追いつかない。だが、アレが相当ヤバいモノである事は容易に想像できる。あちさんを見るとクシャルダオラの様子には気付いていない。
考える前に体が動いていた。全力で走る。
あちさんとクシャルダオラの間に入り盾を構える。あちさんは何が起きているのかわからなかったが、振り返りその状況を理解した。
盾を構えると同時にクシャルダオラから放たれた【ソレ】は、まるで弾丸が回転しながら空気を切り裂く様に、目でハッキリと見える風と何本もの赤い光の螺旋を纏いながら飛んできた。
ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!
ガンランスを地面に突き刺し、両手で盾を構える。次の瞬間、盾に触れた【ソレ】は俺の周りの空気を赤く光らせ、山が揺れる程の爆発を起こす。
『ぐうぅおおおおぉぉぁぁああああー!!!』
両手に凄まじい爆発の衝撃と盾を貫通してきた衝撃波が全身を襲う!肋骨にはヒビが入り、内臓にも相当のダメージが入る!
ガードの上から一撃で体力の九割を持っていかれた。立っていられず、片膝をつき呼吸を整えようとすると吐く息と同時に血を吐き出した。肺がやられたか…!
『た!隆さん!』
返事が出来なかったが、目線だけは動かせた。クシャルダオラの方を見ると目を疑った。
もう一度、溜め動作を始めたのだ!
バカな!連続で撃てるのか!?アレを!
体が動かない!どうすれば!?その時だった。
『やめろー!』
隊長が俺の前に出て叫んだ。無理だ!話など通じるはずがない!だがクシャルダオラは動きを止めた。圧縮されたエネルギーは消え、何かを伺う様に隊長を見る。双方、何が起こっているのかわからずに動けない。
ナゼ…キ……カラ……………
『え?』
頭に直接届いた様な【声】はわずかにしか聞き取れなかった。何だ…今のは?
そして突如、クシャルダオラがこの均衡を破る。空を見上げ激昂の咆哮を上げる!視線の先にいたのは圧倒的な冰気を纏った歴戦王イヴェルカーナ
地面に降り立ったイヴェルカーナはクシャルダオラに呼応する様に咆哮すると二体の歴戦王がぶつかり合う!まるで俺たちなどいなかったかの様に!
『撤退!この隙に撤退するよ!』
隊長が叫ぶ。立てない俺は隊長とおーさんに支えられ、翼竜でその場を離脱する事となった。そして、その日二度目の雪がこの山に降った。
続く。
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966
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:13
ID:bpVzerGo
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第十四話 個性と無個性
『で、この【アスクレーピオス】ってのは何かね?』
『そそそ、それはですね』
今回の調査報告により、隊長は本部にて役員と人事部の担当者数名による尋問を受けていた。ところ変わって雪山支部の事務所
全身に包帯を巻いた俺はリタさん達と話していた。
『あらー…よく生きて帰ってこれましたね…。私の方はキクセアさんと文鳥くんに手伝っていただいたので、早く終わりました^^』
『いや、ミラボレアス討伐を朝飯前みたいに言わないでください。キクセアさんの方はケガとか大丈夫ですか?』
『……………問題無い』
とベンチプレスを上げながら答えた彼は【キクセア】さん。俺より歳は1つ上の男性ハンターだ。メイン武器はランス。普段は口数が少なく、ハンターというよりは武人という感じ。彼はマッスルγの重ね着を必要としない肉体派のハンターである。自慢の筋肉を見て欲しい故、彼は上半身裸でいる事が多い。あと極度の暑がりという事も理由の1つだ。
ベンチプレスを終え、大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部に効いたかを確認しながらポージングをする。俺の視線に気づいたキクセアさんは【HAッ☆】と爽やかなスマイルとポーズをこちらに送る。口数は少ないのだが自己主張は強い。
『キクセアさん、前から聞きたかったんですが』
『……………筋肉のはなs『違います。ガンランスは使わないのですか?』
『……………使わんな』
ふむ、何か理由があるのか。この人の思考になって考えてみる。ランス、ガンランスの違いは簡単に言えば銃火器がついているかいないかだ。
『……………理由は、お前の筋肉に聞いてみるといい』
ぐぬぬ…聞けないから尋ねてるんだが、まぁいい。思い当たるとしたらコレか?
『ランスの場合、槍と盾の重量が左右対象なのに対してガンランスは銃火器分、槍の方が重たいからですか?平等に筋肉に負荷がかからない、とか?』
この発言にキクセアさんがバッと俺を見る。
『……………お前も筋肉と話せるのk『話せません』
キクセアさんはフッと笑い
『……………そういう事にしておく、か』
と呟く。
聞いてた?ねえ?今の聞いてた?話せないから、俺!そもそも筋肉と話すとかそういう概念持ってないから!
このやりとりを境にキクセアさんの俺を見る目が少し暖かくなったし、時おりプロテインをくれる様になった。キクセアさんとの話を一通り終えると、1人の青年が声をかけてきた。
『隆さん、お疲れさまッス。キクセアさんとリタさんとミラボレアスの討伐行ってきたんスけど、自分、自信無くしそうッス』
俺ほどではないが包帯を至る所に巻いた彼は【文鳥】くん。皆から文ちゃんと呼ばれているウチのエースだ。メイン武器は太刀。歳は隊の中で一番若い。俺は彼と話していると落ち着く。何故か?それは彼がこの隊で唯一マトモな人間だからだ。
『気持ちはわかるよ。あの2人の強さはオカシイしね』
『こんだけケガしてるの自分だけスよ!』
いや、ミラボレアスと戦って、討伐して生きて帰ってくるだけでも君は十分凄いんだよ?『キクセアさん、また筋肉に良さげなクエストが来たら回しますね^^』
『……………助かる』『なんなんスか!?アレ!何が助かるんスか!?てか筋肉に良さげなクエストって何スか!?』
『落ち着くんだ文鳥くん!俺たちの様な一般人には理解できない世界もある!強い人達はいろいろとオカシイんだ!あと、この隊には頭のオカシイ人もいる!自分を見失うな!』『へっくしゅん!』
『む?今回の調査で風邪でもひいたかね?あたるくん?』
『すすす、すみません!』夕方、みっちり絞られ、やつれた隊長が帰ってきた。こうして今回の緊急任務は終わりを告げ、古龍観測隊の鉄の掟に新たな一文が追加された。
【全アスクレーピオス禁止】
続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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967
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:13
ID:bpVzerGo
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第十五話 ミーティング
俺たちの調査報告書を受け取ったギルドは学者、研究者を集め三日三晩討論した結果、1つの仮説に至った。
【季節外れの雪】の原因は歴戦王クシャルダオラと歴戦王イヴェルカーナによるものであると。風を操るクシャルダオラと圧倒的な冰気を操るイヴェルカーナがぶつかり合う事で、イヴェルカーナの持つ冰気や攻撃よって作られた冷気が、クシャルダオラの作る竜巻等の上昇気流によって空へ運ばれた。その運ばれた冷気は上空に来ていた寒気を更に冷やした事で季節外れの雪を降らせるに至った。
て、いう事らしいよ』
俺たちが調査してから1週間が経ち、その間に3回の雪が降った。つまりクシャルダオラとイヴェルカーナは2日おきに戦っている事になる。
『それからもう1つ。ギルドから新しい任務がきてさ。ハイ』
特別任務依頼書には案の定こう書かれていた。【クラウンマウンテンにて歴戦王クシャルダオラと歴戦王イヴェルカーナを討伐せよ】
『無茶ゆーよねー』
『本当ですよ。俺なんて一撃で瀕死だったのに』
『あらー、そんな強力な攻撃があるのですか?』
『長い事ハンターやってきたが、ワシもあんなブレス見た事ないわ。なんなんじゃいアリャあ』
『なんかねー、溜めブレスー?みたいなのがあってー。その周りが赤く光るの。ヤバいよー』
『アレはおそらく【オーロラ】です』
『オ、オーロラッスか!?』
『そう。あのオーロラ。そもそもなんだけど…オーロラが発生するメカニズムは太陽で起こる太陽フレア等の爆発現象により発生したプラズマが、地球の大気とぶつかる事で発光する光。それがオーロラである。
大気を構成している酸素原子や窒素分子は中心である【原子核】とその周りを回る【電子】で構成されている。この電子にプラズマがぶつかると電子にエネルギーが生じ、原子核の周りを回る本来の軌道より外側を回るようになる。簡単に言うと軌道がズレるのだ。この状態の電子は非常に不安定であるため、元の軌道に戻ろうとする。元の軌道に戻るために、生じたエネルギーを放出しなければならない。このエネルギーの放出による発光がオーロラの正体なのだ。と、オーロラが発生する仕組みはこんな感じ』
『ででで、でもクシャルダオラとプラズマが全然結びつかないよ!』
『クシャルダオラは【風】を操る龍ですよね?』
『う、うん…』
『プラズマは別名【太陽風】と言うんです』
『!じゃ!じゃああのエネルギーの球体は!』
『はい。【小さい太陽】のようなものです。あともう1つ、クシャルダオラはあのブレスを手加減して放った可能性があります』オーロラの色は赤、緑、紫の3色がある。そして、先程言った電子の【本来の軌道】と【ズレた軌道】の差の大きさによって色が変わる。その差が小さければ赤、大きければ紫。つまり
電子にぶつかるプラズマ(太陽風)の強さによって色が変わるという事なのだ。『あの時クシャルダオラは緑になった光を赤に戻したんです。俺が受けたのは弱いブレスだという事です』
『弱いブレスで隆さんが瀕死ッスか…じゃあ最大まで溜めてたら…』
『間違いなく即死だろうね』
『ワシらのような盾を持たない武器種は弱いブレスでも即死するなぁ』
『そこに歴戦王イヴェルカーナだよー』
『……………厳しい、な』
会議室に沈黙が訪れる。当たり前だ。まだ力を発揮していない歴戦王クシャルダオラの討伐ですら難しいのに、同時に歴戦王イヴェルカーナも討てという無理難題。一緒にいる時に両方とも倒してしまえ、という安直な依頼だ。どうしたものか。
『何もしないと状況は変わりません。まずは出来る事からやってみましょう!』
『装備とかー?』
『あらー、それなら丁度良いモノがありますよ^^』
『……………(HAッ☆)』
『あ!アレの事ッスね!取ってくるッス!』リタさんが何の事を言ってるのかわかった文鳥くんは会議室を飛び出していった。
続く。
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968
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:15
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第十六話 呪い
『お持ちしましたッス!』
会議室に戻ってきた文鳥くんが持っていたのは黒い鎧一式。初めて見るその鎧は俺たちが装備しているモノより、明らかに良いモノだとわかるシロモノだ。
俺が今装備しているのはゾラマグナとシルバーソルを組み合わせたモノで、大多数のガンランサーはこの装備を使っている。ガンランスの火力スキルである【砲術】をLv5にできるのだが、ゾラマグナ3部位を使用しなければならない。通称【ゾラマグナの呪い】である。
『ミラボレアス素材で作られたドラゴン装備ッス!めちゃくちゃ凄いッスよ!あ、ちなみにコレはリタさん用に作られたモノッス』
『まだ試作品らしくて、デザインは男女一緒みたいですよ^^』
おおー!と皆から歓声が上がる。皆興味津々だが、一番目を輝かせていたのは隊長だ。イイなー欲しいなーと口に出てしまっている。
『隊長、試しに着てみます^^?』
『え!?い、いいの!?』
隊長に尻尾があったら今、千切れるくらい振ってるだろう表情だ。
『今は男女兼用みたいなモノですし、着れますよ^^』
『着る着る!やったー!リタさんありがとー!せ、せっかくだからアッチの部屋で着替えてくるよ!』
『手伝うッス!あ、ちなみに今回の討伐のお礼にドラゴン装備を優先的に回してもらえるらしいッス!』
そう言って隊長と文鳥くんはドラゴン一式を持って隣の部屋へと移動していった。ファッションショー的な事がやりたいのか、こういう時の隊長はやたら張り切る。
数分後、バンッと扉を開けて文鳥くんが叫ぶ。
『た!大変ッス!隊長が!隊長があ!』
何事かと皆が文鳥くんの方に顔を向けると、ドラゴン一式を着た隊長が会議室に入ってきた。
『チョットチョットチョットぉー!ワタシどうなっちゃったノー!?』
喋り口調が変わっていて、何かクネクネしている。もっとストレートに言うと【オネエ】っぽくなっている。
『隊長、何ふざけてるんですか?』
『隆チャン!ワタシふざけてないノー!』
『ふざけてるじゃないですか!ちゃんとドラゴン装備の感想聞かせてくださいよ!』
『ホントなノー!信じて隆チャン!この装備を着たらこんな風になっちゃったノー!ヤダー!』
そんな隊長を見て、あちさんが爆笑している。
『と、とりあえず、隊長が本当の事を言ってるのか、試してみましょう!』
『わかったワ!お願い隆チャン!』
『問題、聖闘士星矢のカミュの必殺技は何?』
『大丈夫ヨ!ソレはわかるワ!』
『答えは?』『背負い投ゲー!!!』
『なわけないだろ!ヤバい!隊長が本当にオカシクなった!』
『チョット隆チャン!ソレどーゆー意味ィー!?』
『元々少しオカシかったって意味ッスか!?』
『ガハハハ!本音が出たな!』
『あらー^^』
『……………問題ない』
『問題だらけでしょうがあ!』
『ッ!ッ!お!お腹痛いー♪』
『チョットあちー!どんだケー!』
『チョ!ヤメ!笑い過ぎてお腹よじれるー!やめてー!来ないでー!』
クネクネしたオネエ隊長があちさんを追いかけ回し、文鳥くんが軽いパニックを起こしたり、きーさんが筋トレを始めたり、会議室は騒然となった。さっきまであんなに真剣なミーティングをしていたのに!なぜだ!どうしてこうなった!?この隊はなぜいつもこうなる!?しばらくしてドラゴン一式を脱いだ隊長は元の隊長に戻った。という事はドラゴン装備が原因だったのか?と思ったのだが、次にリタさんが着た時は何も変化は無かった。
『何も起こりませんね^^』
いつも通りのリタさんがいる。どういう事だ?隊長は何かミラボレアスに呪われる事でもしたのか?まさか前世から?いやまさか、ね。いろいろ試した結果、1つの答えに至った。
それはドラゴン4部位を使った
シリーズスキル黒龍の伝説【超越】
によるものだと。この試作品は見た目は男女兼用で誰でも着られる。だが【このドラゴン装備】はリタさん用に作られたモノ。つまり女性用なのだ。それを男の隊長が着る事で、性別の壁を【超越】してしまったのだ。何という恐ろしい力を秘めた鎧だ。
ちなみになぜコレがわかったかと言うと、リタさんの次にあちさんが着て問題がなかった。その次に着たのは俺。そこで異常が出た。そしてとある質問にこう答えたのだ。『背負い投ゲー!!!』
俺の黒歴史に新たな1ページが刻まれた。
続く。
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969
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:16
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第十七話 本部のエリート
対策装備の話は終わり、次は歴戦王2体の討伐に関する作戦について話し合っていた。
『クシャルダオラを担当する人は風圧完全無効が要りますね』
『ワシもそう思うぞ背負い投ゲ』
『……………そうだな背負い投ゲ』
『ちょっとやめて下さいよ!その呼び方は!自分達が着なくて済んだからって酷いじゃないですか!』
『そうヨ隆チャン!皆して酷いわよネ!』
『隊長は何でまた着てるんですか!早く脱いでくださいよ!』
『キャー隆チャンったら!狩られちゃう!ワタシ狩られちゃうワ!』
『BLキター♪』
『そういう意味じゃない!話が脱線しすぎです!真面目にやってください!』隊長がドラゴン一式を脱いで、ようやく話を進める事ができた。作戦はこうだ。
クシャルダオラを担当する者は挑発の装衣を交代で使用し敵視を維持しつつイヴェルカーナから離れる様に誘導しながら時間を稼ぐ。簡単に言うと命がけの囮である。その隙にイヴェルカーナを全力で討伐し、クシャルダオラ担当チームに合流してクシャルダオラ討伐を目指す。
という流れが決まった。あとは誰がどちらの古龍を担当するかの班分けになる。
『ももちゃんを入れて丁度44ですね。どうします隊長?』
『うーん…じゃあね
その時だった。会議室の扉が開き4人のハンターが入ってきた。
『俺たちは本部から来た者だ。お前らがクシャルダオラごときに逃げ帰ってきた腰抜け共か。…ま、そんなツラしたヤツらだな。今回の討伐任務に力を貸すよう【上】から言われてきた。作戦の指揮は俺が取る。わかったな?』
突然の援軍とその傍若無人な態度と言動に皆が固まる。
『オイ、聞いてんのか?使えねぇヤツらだな。まぁいい。俺はユウ。この隊の隊長だ。こっちは副隊長のウタ。その隣がジライヤとナミだ』
『よ、よろしくお願いします』
ナミと言うハンターがおどおどと挨拶する。あとの2人はニヤニヤしながら
『カワイソウじゃないすか隊長〜。逃げ帰ったとかwギャハハハw』
『アッハハw戦略的撤退って言ってあげましょうよw』
『はわわわ!やめましょうよ先輩方』
明らかに俺たちを馬鹿にした言葉にオロオロするナミ。コイツは新人か?まぁどうでもいい。コイツらの印象は最悪だ。
『ぼ、僕が隊長のあたるです。こっちが…
『あぁ、いい、いい。隊長さえわかりゃ、あとのはどうでもいい。つーかお前んトコは随分なジジイがいるんだな。戦力になるのか?』
『お、おーさんはウチの要です!彼の広域による回復や狩猟笛の旋律によるサポートなど、彼のおかげで何度も窮地を乗り越える事ができました!もちろん傷つけやぶっ飛ばし、攻撃も頼れます!』
『ああ!?お前んトコは広域ヒーラーがいんのか!?マジかよ!?』
『ギャハハハwそんなのに頼んなきゃダメなヤツらかよw』
『アッハハw戦略的撤退じゃなくて戦力的撤退でしたwww』
あーダメだ。これは我慢できない。
『おい。本部のエリートだか知らねえが黙れよ』
『あ?』
『おーさんがいたから、この隊は誰も失う事なく今日まで来れたんだ!俺たちがどれだけ救われてるのか知らないでしょうが!』
『そうッス!自分なんて救われっぱなしッス!』『………違うんだ』
俺と文鳥くんがユウに食ってかかろうとした矢先、それを止めたのはおーさんだった。
『隆くん、文鳥くん、違うんだ。…ユウ隊長殿、申し訳ない。あなた方と争う気は無い。どうか、力を貸してください』
そう言って頭を下げるおーさん。俺はそれ以上何も言う事ができなかった。
いつだって全員が生きて帰ってこれる様に考えているのがおーさんだ。コイツらに力を貸してもらうために悔しさを殺して頭を下げたのだ。それが最善だと判断したとしても、俺に同じ事ができるか?何もできない自分が悔しくて堪らなかった。その時『ウチの隊員をナメんじゃねえッッッ!!!』
会議室の空気が震える程の怒号を発したのは隊長だった。温厚で、楽観的で、あの頼りない隊長がキレたのだ。
『お前らなんかより!おーさんの方が強いわあ!!!』
『ほぉ、言ったな。じゃあ今回の討伐で見せてもらおうじゃないか。メンバーは俺たち4人と、俺にたてついたお前ら3人とそのジジイだ』ユウは俺、隊長、文鳥くん、おーさんを指さしてそう言った。
続く。
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970
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:17
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第十八話 時代遅れ
『俺たちがクシャルダオラを殺しといてやるから、お前らはイヴェルカーナを殺れ。次は逃げ出さねえよう、せいぜいキバッてくれよ?』
『隊長〜、俺らだけでやった方が良くないすか?w』
『仕方ねえだろ【上】からの指示だ。ま、あまりにも使えねえヤツらなら即除外する。…そういう事だから、当日はタノムヨ脆弱共』
ゲラゲラ笑いながら会議室を出ていく3人と申し訳なさそうに頭を下げていく1人を、誰一人言葉を発する事なく見ていた。普段は天真爛漫なあちさん、おっとりしたリタさん、感情をあまり表に出さないキクセアさん達でさえ憤慨している。顔には出ていない。だが見ればわかる。伝わってくるのだ。
我慢出来なかった自分が少し恥ずかしかった。
『ゴゴゴ、ゴメンね皆!僕のせいでこんな事になって!』
さっきの威勢はどこへやら、いつもの隊長が頭を下げる。
『あらーカッコ良かったですよ^^』
『……………良く言った』
『ちょっと見直したかもー♪ちょっとだけねー♪』
隊長には場の空気を和ませる力がある。たった一言で会議室の殺伐とした空気が和らいだ。それは努力や鍛錬で身につくモノではない。持って生まれた天性のモノだ。彼には計画性が無い。…あまり無い。あー、違うな。飾らない。そう、飾らない、だ。だからこそ、ストレートに思いが伝わる。あ、勘違いしないで欲しい。これはディスってない。褒めている。『師匠の事何も知らないのに悪く言うんだもんなー!頭にくるよ!』
『おーさん、俺たちはいつも救われているんですから、アイツらの言う事なんて気にしないでください!』
『隊長の言う通りッス!おーさんはこの隊の要ッス!』
『そうですよ、おーさん^^』
『……………違いない』
『アタシたち、ホントおーさんに救われっぱなしだよねー♪』
『アイツらに師匠の凄さを見せつけてやろー!』
オオー!と皆が拳を上げる。いつもの雪山支部が戻ってきたようだ。本部のエリートだか知らねえが目にモノ見せてくれる!
『やってやりましょう!おーさん!………おーさん?』
『皆…スマンな。ワシは…ワシはな、………ッ!』
何かを言いかけて会議室を飛び出していってしまった。
年齢の事も、戦い方の事も、皆の前でバカにされたのだ。そして、その相手に頭を下げなければならなかった屈辱。出ていく彼を止められる者はいなかった。
その日、おーさんは支部に帰ってくる事はなく、皆、心にわだかまりを残したまま家路についた。3日後 討伐作戦当日
俺たちは各々支給されたドラゴン装備を身につけて、それぞれの武器を手にして集合する。重ね着カスタムをして、いつもの自分で、いつもの雪山支部のメンバーがそこにいた。そして、相変わらずの態度で見ているだけでも気分が悪くなるアイツらもいる。というか、アイツらもドラゴン装備なのか。相手はクシャルダオラだが大丈夫なのか?俺の視線に気づいたユウが、聞いてもいないのに喋り出した。
『こっちにも……あぁ、違う。こっちに【は】優秀な狩猟笛がいてな、【スタミナⅣ】旋律で風圧完全無効しつつ火力も出せるんだわ』
『照れるっすw今回は仕方なくムフェト笛すけどねwいつもはミラ笛でーすw』
本当に鬱陶しいヤツらだ。コイツらと共闘しなければいけないのかと朝から気が滅入る。
メンバーはこの8人クシャルダオラ討伐チーム
ユウ 大剣
ウタ 弓
ジライヤ 狩猟笛【スタミナⅣ】
ナミ 太刀イヴェルカーナ討伐チーム
あたる 大剣
おーさん 狩猟笛【攻撃Ⅲ】
文鳥 太刀
俺 ガンランス【放射Lv6】『なんだソレ!?お前も時代遅れかよ!今は殴りガンスの時代なんだぞ!?普通ミラガンス担ぐだろ!バカか!』
『しかも笛の旋律【攻撃Ⅲ】すよwあんなメンドイのなんてオッサンに使えんのかよw』
『はぁー…ホントに大丈夫かよコイツら。足引っ張んじゃねえぞ』
そう吐き捨てると4人は翼竜で先に行ってしまった。
慣れてない武器担ぐより、手に馴染んだ武器担いだ方が戦えるに決まってんだろ!なんでも自分の意見が正しいと思いやがって!
『じゃあ、僕たちも行こうか!』
『アタシたちは待機してるねー♪いってらー♪』
『……………ぶちかましてこい』
『御武運を^^』
『ニャー!』
3人と1匹に見送られ、歴戦王二体討伐作戦の幕が切って落とされた。 続く。ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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971
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:19
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第十九話 過程
クラウンマウンテン山頂付近
先行した4人は王冠の縁(へり)に立っていた。
前回調査に来た時よりも雪は増え、山頂付近は積雪5メートル程はあるだろうか。しかし、カルデラ内は変わらず岩肌の地面と壁がむき出しになっている。それはクシャルダオラが此処に健在し、全ての雪を吹き飛ばしている証だ。そしてイヴェルカーナを再三に渡り撃退している証でもある。
翼竜から降りホットドリンクを飲んで、4人の横へ並ぶ。
『お前らが逃げ出したのは、あの汚ぇクシャルダオラだな?歴戦の個体よりは、まぁデカイか』
ユウの言葉に何か引っかかるモノを感じながら、カルデラ内を覗いた。そこにはあの日対峙したであろうクシャルダオラが……?…あんな色じゃなかったよな…?
ところどころグレーや黒が見てとれるものの、大部分が赤茶色に変色しているような…『クシャルダオラしかいねえなら、まずは俺たちだけで殺る。お前らはイヴェルカーナが来るまで見てろ』
『あ!あの!僕たちが戦ったクシャルダオラですが、アレは…
『聞こえなかったのか?お前らは見てりゃいいんだよ。いくぞ。ジライヤ、旋律だ』
隊長が異変を伝えようとしたが、ユウは聞く耳を持たず、仲間に指示を出し、バフと旋律による強化を終えるとカルデラ内へ降りていった。縄張りへの侵入者にクシャルダオラが咆哮するが、4人は回避と同時に各自、分担された立ち位置へと散る。
弓のウタが挑発の装衣を着て、クシャルダオラ正面にて敵視を担当。弓による射撃とチャージステップでの回避+コンボ数の管理。的確な剛射。そして何より頭部を狙う正確なエイム力は、悔しいが自分には真似できない技術だ。まさに火力を出す回避タンクである。左右には太刀と狩猟笛が攻撃を継続しつつ、大技を当てる機会をうかがっている。大剣のユウは完全なるインファイトの真溜め型。真溜め斬り後も回避行動、飛び込みなぎ払い、タックルを駆使して、常にクシャルダオラに張り付いている。上手い大剣使いは納刀しない。デカイ口を叩くだけある。流石はエリート部隊の隊長という動きだ。
ふと同じ大剣を担いだウチの隊長を見ると、サッと俺の視線をフレーム回避する。こういう時の回避は天才的に上手い。だが、気になるのはあのクシャルダオラだ。色もそうなのだが、俺たちが遭遇した時に比べ、明らかに動きが鈍い。これはイヴェルカーナとの戦闘を繰り返している事で弱っているという事なのだろうか?ユウたちの攻撃はほぼ命中している。
『アッハハwなんか弱くないコイツ?w』
『は、はい!予想していたのよりは、です』
『こんなザコ相手に逃げたのかアイツらは。どんだけ弱えんだよ』
『てか俺らが強すぎなんじゃないすか?w』
よほど余裕なのか、会話しながら戦っている。だけど、なんだろう…この胸騒ぎは。何か変だ。
『隊長、さっきユウに何か言おうとしてませんでした?』
『う、うん。僕も見るのは初めてなんだけどね。あのクシャルダオラはたぶん、錆びたんだと思う』『もうすぐスタン取れそうすよ隊長ぉー』
『聞いたな?スタンが取れたら一気にキメるぞ』
『『『了解』』』
返事後すぐに各自怪力の種を口にし、ナミが鬼人の粉塵を撒く。
宣言通り、ジライヤの狩猟笛が頭部にヒットしクシャルダオラは大きくのけぞった後、地面に倒れる。ソレを合図に太刀による気刃突きからの兜割り、納刀し居合抜刀斬りから更に斬撃を叩き込む。弓は射撃とチャージステップ、剛射を撃ち込み続け、狩猟笛は響音攻撃を最速で繰り返す。ユウはダウンに合わせた頭部への真溜め斬り、からの前転、なぎ払い、強化撃ち、そして
『もぉいっちょおおぉぉー!!!』
真溜め斬り!
渾身の一撃が命中しクシャルダオラはダウンから起きあがろうとするも、そのまま伏すように地面に倒れ動かなくなった。
流石は本部のエリートか。各自がダウンの時間をフルに使って最大火力を出し切った。この短時間であのクシャルダオラを沈めてしまった。こんなにも統率の取れたチームがあるのかと驚きと悔しさと憧れに近い感情が入り混じった思いで4人を見ていた。その時、隊長がボソッとさっきの続きを話すように言葉を発する。
『錆びたクシャルダオラってね…ビシッ………ビシビシッ……………バキッ…
脱皮直前のクシャルダオラなんだ』
続く。
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972
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:20
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第二十話 解き放たれた龍
『アッハハwマジ楽勝ぉーw』
『俺ら最強ぉ〜すwギャハハハw』
『ただデカイだけで通常の個体より弱ぇとはな…拍子抜けもいいとこだ』
仕留め終えたと思っている4人は、こちらに向かって歩いていた。クシャルダオラを背にしていては気づかないであろう異変は、王冠の縁からカルデラの全体を見れる俺たちの目にはしっかり映っていた。クシャルダオラの体が一瞬うごめく様に動いた後、四肢を大地に固定し起き上がった。その直後バリバリバリ……バキンッ!
という音と共に頭頂部から尻尾の付け根辺りまで亀裂が入り、内側から大きな力でこじ開けられた様に裂ける。その音で異変に気づいた4人が振り返ると、そこには倒したはずのクシャルダオラが今まさに脱皮しようとしているところだった。
理解が追いつかない様子で固まる4人。しかし脱皮は進む。今、攻撃を再開していたら討伐できるチャンスなのかも知れない。だが、思考が追いつかないゆえ、動く事ができない。人は想像を超えた異変が目の前で起こった時、ただ傍観する事しかできなくなるのだ。バキバキバキッ
先ほどまでの裂けた部分が左右に大きく割れ、新たな姿を現す。【純白】という言葉に相応しい白いクシャルダオラは巨大な翼を広げ、天に向かって咆哮する。瞳の深い青以外白。角も体も翼も尾も全て白。その姿は4人と俺たち全員が魅入ってしまう程に美しく、神々しい。そして、外気に触れた体はまるで波紋が全身に広がる様に硬化を始める。鋼龍に相応しい強度まで硬化した全身はまた色を変える。光沢のある白と銀のグラデーション。俺たちが今見ているのは
白銀のクシャルダオラ
だ。神々しさだけでなく、雄々しさも加わった、まるで神話の1ページを見ているかの様な光景に、視線を外す事ができない。
ただ唯一わかる事は、目に映るアレは今まで対峙した古龍の中で一番ヤバイ相手である事。自分の思考がクシャルダオラに釘付けになっていて、良い言葉が見つからない。ヤバイ。本当にヤバイ。全身の細胞がそう叫ぶ様に、俺の頭があのクシャルダオラを危険だと認識する。『なんだコイツ?こんなのは初めて見るな』
『わ…わかりません』
『アッハハ…どうなってんの?』
『ま、まぁ!もう一回殺っちゃえばいい話っすよ!』
『仕方ねぇ。もう一度だ。ジライヤ、せんり…バグンッ!!!
一瞬の出来事だった。一回の跳躍で30メートル程の距離を一気に詰め、ウタの右肩から腰辺りまでを斜めに喰らいついた。ミシミシ…ギギギギィ…と鎧が潰されている音でウタが叫ぶ。
『う!うわあああぁぁぁああああ!!!』
その絶叫にも等しい悲鳴で他の者も我に返り、慌ててウタを助けようと武器を取り、飛びかかる。
『副隊長を離しやがれぇ!』
側面から頭部を狙い、ジライヤが狩猟笛を振りかぶる。刹那、ジライヤが吹き飛ばされ宙に舞う。その姿は脇腹辺りの一点を横から凄まじい衝撃をもらったかの様に、正面を向いたまま、ひらがなの【く】の様な姿でぶっ飛ばされた。それは目にも止まらぬ速さで振り抜かれた尻尾による一撃だった。
『はああぁぁぁぁ!』
反対側に回り込んだナミが、ウタを助け様と同様に頭部への突きや切り上げを仕掛ける。が、先ほどの動きとはまるで違うクシャルダオラには擦りもしない。後方へ横回転しながら飛び退いたクシャルダオラは、その回転を力に変え、着地と同時に全身の筋肉を使って首を薙ぐ。途中で口からウタを離し、ナミへとぶつけたのだ。二人はジライヤが倒れている方へとふっ飛んでいった。
『テメェエエエッ!』
ユウが抜刀斬りを放つも、これもまた容易に避けられ、距離を取られる。…真溜め型への…対処…なのか?まさか?
生命の大粉塵を撒きながらユウは思う。
(さっきとは別物じゃねえか!どうなってやがる!?)脱皮とは成長ではなく新陳代謝である。錆びて動きの悪くなった重すぎる鎧を捨て、しなやかで強固な新しい鎧に着替えるための行為。今、彼が対峙しているのは、別物ではなく
【別次元】のクシャルダオラと言って良いのだ。
続く。
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名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:21
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第二十一話 器
ユウは内心焦っていた。本部でも精鋭と謳われている自分達が窮地に立っている事が信じられなかった。いや、認めたくなかったのだ。
ふと【全滅】【死】という言葉が脳裏をよぎる。戦いの最中、一瞬途切れた思考に気づいて我に返った時、その目は最悪な光景を捉える。クシャルダオラの口元から帯状の赤い光が何本も揺らめいているのが見える。
『オイ!早く起きろ!』
『…は…はい…ぐっ』
その言葉にヨロヨロと立ち上がった三人は各自秘薬を使い、もう一度武器を構える、が、クシャルダオラの見た事も無い溜め動作に動きが止まる。
『ボケッとすんな!アレを回避したら陣形を立て直し、もう一度仕掛ける!ジライヤは旋律を優先!ウタは正面で頭を狙え!俺とナミは風圧完全無効が吹かれるまでは尻尾だ!』
『『『了解!』』』
ユウの指示に従い四人はブレスに備える。通常のクシャルダオラのブレスならば、それで問題ない。だが、この個体のこのブレスには間違いである。むしろ【備える】など命取り。『納刀して早く逃げろおぉ!』
『え?た、隊長…どうしま…』
王冠の縁から叫んだ俺の言葉に反応したのはナミだけだった。そして赤い光は緑へ色を変え、一回り大きくなったエネルギーの球体は三人の方へと放たれた。
『くるぞ!……あ?』
それは遠目に見てもわかった。弾道が低い。あれでは誰かに命中する前に地面に落ちる。…ミス…したのか?三人もそれがわかったのか、少し余裕を取り戻す。
『実はアイツが一番焦ってたりしてw』
『アッハハwかもねw』
あの弾道では三人の少し手前の地面に着弾するだろう。
…………ッ!!!ここで気づく!『納刀して緊急回避するんだあぁぁ!』
俺の言葉が言い終わるのと同時か、ブレスが地面に着弾する。着弾点から目に見える半円の衝撃波の歪みが膨れ上がる様に大きくなって消え、緑の光が辺りを包む。直後、轟音と共に凄まじい爆発を起こし、何本ものオーロラの帯が大きな螺旋を描いて空へ向かって伸びる。
離れた場所にいる俺たちのところにも爆風と衝撃波がくる。カルデラ内の岩か岩盤が吹き飛ばされたのであろう、後方では大きめの音が三つと小さめの音が一つ、雪の上に落ちる音がした。なんて恐ろしい威力なんだ。以前、盾で受けた俺には見えなかった光景を目の当たりにして震えた。
だが、もっと恐ろしいとわかった事がある。このブレスは外れたのではない。【わざと地面に撃たれた】ものである。ブレスを当てるのではなく、爆発を当てる様に放たれた。そう、この戦い方はあちさんの徹甲ライトでの戦い方。学習しているのだ。自分がやられた事を理解して、自分の技に応用し、実践した。このクシャルダオラは成長している!四人は!?どうなった!?爆発の直前、ナミが緊急回避したのは見えたが…。カルデラ内を見ると、そこには凄惨な光景があった。
ナミは元いた場所から30メートルほど吹き飛ばされていた。緊急回避で飛んだため、爆風に飛ばされたようだ。倒れたまま血を吐いている。爆発のダメージより、衝撃波のダメージの方がある感じか。ジライヤはうつ伏せに倒れ、ピクリとも動かない。ウタにいたっては、噛まれた右肩から腰にかけてが…無い。鎧の耐久性が失われていたのだろう。いや、仮に噛まれていなかったとしても、あのブレスには耐え切れなかったはずだ。ナミのように緊急回避しなかった時点で彼らは…。
三人より少し離れた場所にいたユウは【なんとか立っている】という様子だ。爆発を咄嗟にガードしたのか、大剣は少し歪んでいる。が、もっと目につくのは右手首から先が無い事。ガード時にグリップの部分を握り、爆発を耐えようとして、装甲の無い手の平側を向けてしまったのだろう。出血が酷い。『どどど、どうしよう!?このままじゃ…ッ!』
隊長の言葉の最後には、言わなくてもわかる全滅の二文字があった。今、目の当たりにした光景と以前受けたダメージと死への恐怖が助けに行く事を躊躇させる。どうすれば良い!?俺に何が出来る!?その時
『まだ救える命がある!助けに行くぞ!弟子よ!救難信号で皆を呼ぶんだ!ワシらだけでは限界がある!人手は多い方が良い!』
声を上げたのはおーさんだった。
ああ、そうだ、この人は誰かを助ける事に迷いが無い。例えソレが、自分を傷つけた者でも関係無いのだ。全てを救う、そういう人だ。だから俺たちは皆、おーさんの事を信頼しているんだ。
『救難信号上げます!お願い皆、早く来て!』
隊長が信号を上げた刹那!後ろから聞き慣れた天真爛漫な声がする。『呼んだぁー♪♪♪?』
続く。
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974
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:22
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第二十二話 心意気
驚いて振り返ると、そこに立っていたのは三人と一匹。声の主である彼女は満面の笑みで天に向かって手を広げ、片足は浮かせて立っている。文字で言うと【Y】だ。隣では小さなハンターが照れくさそうに彼女と【対】になるポーズをとっている。その右側には両足を広げ、腰を落とし、左手は拳を握り腰元へ。指を伸ばした右手は左上に掲げている男性ハンターが。【シャキーン!】という音が聞こえてきそうだ。そして左側には45度体をひねり、左手は腰へ、右手は親指、人差し指、中指で【三】を作り顔の横でポーズを決める女性ハンターがいる。腕の形は【斜めにしたZ】。
…………………………。
俺たち四人と彼女ら三+一がしばし見つめ合う。『『『『ええええぇぇぇえぇぇ!!!』』』』
驚愕する俺たちと【してやったり感】満載でドヤ顔する彼女。
『あち!キクセアさん!リタさん!もも!なんでここにいるのお!?』
『……………偶然だ』
『隊長たちが出発してすぐに匿名で緊急の納品依頼が来たのー♪』
『……………偶然な』
『で、その依頼が【至高のハチミツアイスを届けろ】ってゆーのでねー♪ほらー美味しいハチミツアイスってイヴェルカーナで作るでしょー?でも至高って書いてあるからー…歴戦王イヴェルカーナで作るかもー♪って思ったのー♪で、今日ココに丁度くるでしょー♪』
『……………偶然か』
『たまたまクエストの場所が一緒になっちゃったけど、フフ、ここまで偶然が重なると^^』
『……………必然だ』
『べ!べつに隊長たちが心配で来たんじゃないんだからねー♪勘違いしないでよねー♪』
あ、そういえばさっき後ろで物音がしたっけ!…まったく、この人たちは…。なんでこんなに緊張感が無くなっちゃうんだろうか。だけど……………もう大丈夫だ!>>975 へ続く
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975
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:25
ID:bpVzerGo
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『良かった!ワシらだけでは危なかったかもしれん!今から彼らを助けに行く!手伝ってくれんか!?』
『……………当然だ!』
『じゃあ隊長はクシャルダオラよろしくー♪』
『ええ!?ぼ!僕にはできな…
『あ!もしやり遂げたら、さっき見つけた【子ダオラの抜け殻】、タダであげちゃう!』
『わかりました。僕がエサになりましょう(キリッ)』
『じゃあ、隆さんとおーさんはナミちゃんを。キクセアさんとリタさんはユウを救出して♪隊長とアタシと文ちゃん、ももちゃんはクシャルダオラを引きつけるよー♪!二人を救出したらカルデラ内から一旦避難!ココに戻ってきてねー♪』
『皆、これだけは言わせてほしい(キリッ)。僕が囮になるのは僕自身の意思であって、決して子ダオ…
『じゃあ!いっくよー♪』
『チョ!オマ!…くっ、もも!【アレ】をやるよ!』
その言葉に対しももちゃんが超絶嫌な顔しているのを尻目に、皆、翼竜で飛び出す。カルデラ内に降り立った俺はおーさんと共にナミの元へ走る。おーさんは広域で二人を回復しながら走っているのだが、食べ続けている。それ程までに二人の状態は深刻なのだろう。俺たちは全力でナミの元へ向かった。
『助けに来たぞ!安心せえ!もう大丈夫だからな!』
『……あ、…どうして…私達は…あなた…に…ッ…酷い事を………ゴフッ!』
おーさんが抱き起すと、ナミは喋ろうとするも、肺を…いや、体の内部を衝撃波でやられ、吐血する。
『ガハハ!ワシはバカでな!そんな昔の事は忘れたわ!礼なら、あとでメシでも奢ってもらおうかのお!ワシは大食いだから覚悟せえよ!』
豪快に笑うおーさんから想像を超えた言葉が返ってきたのだろう。大きく開いたナミの瞳から涙が溢れ、喋れない彼女は何度も頷く。まるで何度も何度も【ありがとう】と伝える様に。
ぐぅう…見てるコッチが貰い泣きしそうになり、グッと堪える。と!とにかく今はカルデラ内から避難しなくては!
クシャルダオラの方を見ると、こちらに向きを変え、飛びかかろうとしていた。その時『ちょいとお待ちなすってえ鋼龍の旦那あ!』
べべん!!!三味線の音と共に響き渡る声。もう一度言う。人は想像を超えた異変が目の前で起きた時、ただ傍観する事しかできなくなる。そして、それは知性が異常に高いこのクシャルダオラにも言える様だ。見えない、だが頭の上に【?】がある。
声の方を見ると、そこには独特なポーズを取りながら片足ずつスキップするようなステップで、クシャルダオラの前に現れた隊長がいた。手の指は目一杯開き、左手は前へ突き出し、右腕の肘は後ろに、手は顔の横に。顔には何か貼りつけてあるのか、濡れた様な薄く白い生地?に眉毛の様な黒いラインと左右対象に赤いラインが入っている。三味線を弾いているのは、狐面をした猫。『あっしぁ古龍観測隊雪山支部のカシラぁやらしてもらってますぁ、あたるっちうモンでごぜえやす!』べべん!
『あち副隊長…隊長は何…してるんスか?』
『東の国の見世物かもー♪なんて言ったかなぁ?KABUKIだっけー♪?奇をてらいまくった作戦ね!顔に貼りつけてるのは、東の国から取り寄せた化粧水パックなのー♪ほらー隊長って形から入る人でしょー♪?』
これが見事にクシャルダオラの動きを止める事に成功した。だが、上手くいきすぎて俺たちの動きまで止まる。『あ!惹きつけてなんぼの囮に候お!』
べべべん!続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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976
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:26
ID:bpVzerGo
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第二十三話 隊長たる者
『よ!雪山屋♪さすが隊長で候ぉー♪』
『かぁーっかっかっかぁー!』
『…え?そうろう?…なんスかソレ?』
『ほら文ちゃんも言ってあげて♪隊長は褒められて伸びるタイプだから♪』
『り、了解ッス!…た、隊長はそうろうッス!』
『!!!』
褒められると思っていた隊長は、文鳥くんの思いもよらない一言に血反吐を吐いて倒れた。それをクシャルダオラに何かされたと勘違いした文鳥くんは、隊長を励まそうとさらに叫ぶ。
『隊長はそうろうッス!大丈夫ッス!まだヤレるッス!隊長はそうろうなんスから!』
『ヤメテー文ちゃん!彼のHPは0よー!』
言葉は時に刃となり、人を傷つける。使い方を間違えると隊長の様に簡単に瀕死まで追い込む事が出来てしまう。文鳥くんの場合、【助詞】を間違えた事で文章はこうなる。
【隊長は早◯ッス!】べべべん!キクセアさんたちの方を見ると、どうやら離脱の準備は整った様だ。こちらも大丈夫だという合図をあちさんに送ると、ももちゃんが煙幕をクシャルダオラに投げつける。その一瞬の隙を突いて、俺たちはカルデラ内から離脱。一名、心に重傷をおったものの、二人の救出に成功した。
王冠の縁に戻った俺たちは、まず二人の応急手当をした。おーさんの回復と今使用した秘薬のおかげである程度は回復した。しかし、衝撃波による身体内部へのダメージは重く、これ以上の回復は見込めないだろう。
手当をしながら、ふと気づく。
『リタさん、その肩がけのバッグ、あちさんのですよね。何が入ってるんですか?』
『フフッ、【秘密兵器】かしら^^おーさん、コレ…
『ふざけんじゃねえ!俺はまだ戦える!どけ!』
俺たちの手を払ってユウが怒鳴る、が、誰の目から見ても、もう戦える状態ではない。だが、プライドがそれを許さないのだろう。
『た、隊長、私達はもう戦えま…
『うるせえんだよ!つうかお前みたいな新人がいたから、アイツを仕留め切れなかったんだよ!』
『ッ!…すみません』『ん?あち、そのライトボウガンって、ネロミェールの重ね着?ちょっと見せてもらって良い?』
『え?う、うん。いいよー』
『へぇー可愛いね!こんなデザインになってるんだねー(カチャカチャ)』
『えへへー♪お気に入りなんだよー♪』『お前じゃなかったら、あの二人も死んでなかったかもなあ!』
『ごめんなさい…ごめんなさい…ッ』
何言ってんだコイツは!!
これは明らかな責任転嫁だ。自分達の力を過信した事。クシャルダオラを侮った事、人の話を聞こうともしなかった事、その慢心が招いたこの結果を認めず、あろう事か新人の彼女のせいにして責めるとは!もう我慢できない!怪我人だろうと関係ない。ぶっ飛ばしてやる!
『そもそもなあ!お前なんてウチの隊にいら…
(カチャカチャ…カチッ)
バスッ!
…あ?なんだ…コレ?…ッ!テ、テメェ!ふざけ…ん……(バタッ)』
『ごごご、ごめん!僕、ライトボウガン触った事無くて暴発しちゃった!』
俺が掴み掛かろうとした時、手当のために鎧を脱がせていたユウの右胸に捕獲用麻酔弾が撃ち込まれ、ユウはものの数秒で深い眠りに落ちた。
『隊長ひっどーい♪』
『軍法会議ものですよ。コレは』
『師として恥ずかしいわぃ』
『気をつけて欲しいッス!』
『味方に当たったらどうするんですか^^』
『……………全くだ』
『ニャー!』
『えええぇぇぇえー!』
皆、それぞれ隊長に一言申しつつも、満足げな顔で親指を立てている。そんな俺たちを見て、ナミは戸惑いの悲鳴を上げていた。『え?』
と、一人ポカンと口を開けている隊長。皆で【よくやった!】【隊長もやる時ゃやる!】と盛り上がっていると
『え?』
『『『『『『……………え?』』』』』』
しばしの沈黙の後、皆の顔が徐々に驚愕の表情に変わっていく。
『『『『『『えええぇぇぇぇ!!!』』』』』』
ま、まさか!アンタ…本当に暴発しただけか!?『え?』 続く。
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977
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:27
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第二十四話 挑戦者
『けけけ、計画通り!』
『『『『『『………』』』』』』
ナミを含めた六人と一匹は、一人の男を蔑んだ目で見ていた。隊長は状況が理解出来たらしく、ソレに乗っかったようだ。だが、隊長の言う通り、コレは計画的犯行かも知れない。
『み、みんなー♪切り替えていくよー♪』
『あちさん、逃げようったって無理ですよ?』
『うむ。副隊長は教唆(きょうさ)罪に問われるかもしれんな』
『良い場所にいてボウガン渡したッスもんね』
『都合良く麻酔弾がセットされて^^』
『……………臭うな』
『こ、殺したのはこの人ですぅー!』
『こここ、殺してないよ!生きてるよ!』
『はいはい、話をすり替えない。で、どうなんですか?』
『黙秘します〜♪』
言動と態度から限りなくクロに近い。
『ももちゃんはどう思う^^?』
『ニャー』
ももちゃんはあちさんにイエローカードを出し、あちさんは後日、支部裁判にかけられた。が、証拠不十分と【どうやってユウの右胸に撃たせたか】を立証できなかったため、無罪となった。ユウはももちゃんが猫笛で呼んだ、通称【ネコタク】によって本部医療班の元へ運ばれていった。事情を聞いたアイルー達は【コノ腐れ外道ニャー!】みたいな顔をしていた。彼は本当に本部に運ばれたんだよね?ももちゃん、あの子達は本当に大丈夫だよね?
隊長はユウが撃たれた事を上層部に報告しないか焦っていたが、その心配は無いだろう。彼は傲慢でプライドが高い。自分の判断ミスで仲間二人を失い、自らも重傷を負って戦線を離脱。更に味方に眠らされて本部に送り返された等、口が裂けても言えないはずだ。
彼はこの先、どう生きていくのだろう。そう考えていた時、カルデラ内からクシャルダオラの【咆哮】がした。
『おいでなすったな』
『はい』
【ソレ】が何を意味するのかわかった俺たちから、笑みが消える。カルデラ内に二頭の歴戦王。さぁ、役者は揃ったわけだ。
『じゃークシャルダオラ陽動班は時間稼ぎね♪怒らせるとどうなるかわかんないから、囮と回避に専念して!命を大事に!イヴェルカーナ討伐班はしんどいかもだけど頑張って討伐ねー!』
『隊長、振り分けはどうします?』
『うん…イヴェルカーナ討伐班はこのままいこう!あちたちが時間を稼いでる間に、僕たちは全力でイヴェルカーナを倒すよ!』
『『『了解!』』』
『本当に危ないと思ったら、撤退するから!僕かあちが空に閃光弾を撃ったら、各自モドリ玉で即離脱してね!』
『『『『『『了解!』』』』』』
『いっくよー♪♪♪』
『『『『『『おおー!!!』』』』』』
あちさんの号令で皆が翼竜でカルデラ内に降りていく。俺も続いて指笛を吹こうとした時、ナミに呼び止められた。
『あ!あの!…あんなの、敵いっこないですよ。なのに、どうして行くんですか?』
『………たしかにね。本部の君達でさえ歯が立たなかった相手と歴戦王イヴェルカーナだし…気持ちはわかるよ。俺も前に死にかけたしね(苦笑)。でもさ…バカと思われるかもしれないけど…根拠は無いんだけどさ、あの騒がしい仲間と一緒なら、なんか勝てそうな気がするんだよね!…あぁ〜ダメだ。言ってて恥ずかしくなってきた。じゃ!行ってきます!』
『あ……………。…仲間……』一足先にカルデラ内に降り立った皆は、激しい戦闘を繰り広げている二頭へ走っていた。あちさんの合図で、おーさんがイヴェルカーナ、リタさんがクシャルダオラの頭部にクラッチで張り付く。二人は二回クラッチ攻撃で向きを変えると、そのままぶっ飛ばす。二頭を離したところで、隊長とあちさんが挑発の装衣を着て、更に距離を取ろうとした時だった。二頭の間、丁度先程まで二頭が争っていた場所に、上空から黒く巨大な影が降ってきた。舞い上がる土煙の中から現れたのは、全てを滅ぼさんとする覇気を纏った
悉くを滅ぼすネルギガンテだった。
続く。
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978
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:29
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第二十五話 最強の盾、最強の矛
『ネネネ、ネルギガンテ!?』
『歴戦王二頭の力に引き寄せられて来よった!あやつは二頭を喰う気だぞ!』
重低音の唸り声をあげて、ネルギガンテは未だ遭遇した事がない歴戦王クシャルダオラに視線を送る。最初の獲物を決めると、狩りの邪魔であるハンターに視線を移し、あちさんに襲いかかった。
『ヤッバー!』
全身筋肉と言って良い巨大な体からは想像もつかない程俊敏な動きで飛び込み、体重を乗せた前脚の叩きつけが彼女を襲う。ネルギガンテは理解できずにいた。今までの幾千の戦いの中で命を奪ってきた感覚。ソレとはまるで違う前脚の違和感とその気持ち悪さ。押し潰すはずだった前脚は地面に到達する事なく、たった一人の人間によって【受け止め】られたのだ。
『キクセアさんー♪』
盾の影から覗く眼光にネルギガンテは反射的に飛び退いた。直後、目を狙った上段突きが空を切る。本能による回避が無ければ、片目は貫かれていた。
『キクセアさん!リタさん!クシャルダオラはアタシ達に任せて、ネルギガンテをお願い!』
『あらー、あちちゃん?ランスの見せ場よ?キクセアさん、その子、お願いね^^』
『え?は、はい!キクセアさん、お願いしますー!』
『……………承知した』
元ランサーの彼女は知っている。ランスの真髄を。ゆえに仲間に託す事ができる。そして、信頼する仲間から託された彼は滾る。この状況で燃えないランサーはいない。ネルギガンテの目は一人のハンターを凝視していた。盾と槍を持ち、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくるその姿。自分より遥かに小さい生き物が放つ不釣り合いな威圧感と殺気。ソレに臆した自分を否定する様に咆哮を上げる。コイツを倒さなければ、あの獲物には辿り着けない事を理解する。標的を目の前のハンターだけに絞り、襲いかかる。
『……………参る!』キクセア(ランス)vs悉くを滅ぼすネルギガンテ
両者、鍛え抜かれた脚力で大地を蹴り、ぶつかり合う。ネルギガンテの前脚を盾で受け、全身の筋肉を使って、その反動を槍へと伝える。敵の攻撃を自分の攻撃へ繋げたカウンター突きはネルギガンテが角で受け、初手互角。二手目、先に動いたのはネルギガンテだった。地面に額を叩きつけ、頭部の棘をキクセアに向け、突進してくる。その攻撃を後方へのガードダッシュで捌く。更に後ろに反り返った角を振り上げる、が、バックステップで回避し上段突きを打ち込む。
ランスは大剣の真溜め斬り、双剣の乱舞、ガンランスの竜撃砲等と違い【華】が無い、そう思われている。鈍足で防御してチクチクしているだけ。地味で火力が出ない武器だと。否!それは違う。ランスを極めた者の動きはとても美しく、強い!
ランスとガンランス、よく比べられる二つの武器だが、彼らが持つ盾はガンランスの盾とは似て非なるモノ。ガンランスの盾は【防御】のための盾。だが、彼らランサーが持つ盾は【攻撃】のための盾である。モンスターの攻撃を【受け止めて】攻めの守勢を発動させ、攻撃力を上昇させた上でカウンターを放つ。隙があれば突き。モンスターの攻撃には守勢+カウンター。
他の近接武器は基本的にモンスターの攻撃後の隙を狙い攻撃する。簡単に言うとターン制の戦い。ランスは違う。彼らは攻撃し続ける事が出来る。モンスターの正面に立ち、ピンポイントで弱点を突き、零距離で打ち合い続ける。ランスは近接武器の中でも随一の【超攻撃型武器】と言って良い。
そして、彼女が言った【見せ場】。それはランスが近接武器の中で最強になる条件が今揃っている事。その条件とは、ブレス等の遠距離攻撃が無いモンスター、つまり【肉弾戦】を仕掛けてくるモンスターとの一対一の【タイマン】である事。その最たるモンスターが悉くを滅ぼすネルギガンテなのだ。とめどない打ち合いの中でキクセアが銅の下に潜ってしまった時、ネルギガンテが咆哮を上げて上空へ飛び立ち、全体重を乗せた大技をみまう。それをパワーガードを使い背中で受け、全方位カウンターで頭部を突く。激昂したネルギガンテは前脚を叩きつけ、隙を見せたと誘い、キクセアが突きを放とうとした時、もう一度高速の叩きつけを出した。今度は前脚に確かな手応えがあった。
だが、その相手は立ち上がり、また自分の前に立ち塞がる。頭から流れた血が頬をつたい顎から落ちる。負傷したにも関わらず、眼光は更に増した。『……………ここは死んでも通さん!!!』
続く。
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979
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:31
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第二十六話 陰と陽
キクセアさんが一人でネルギガンテを抑え込んでいる。それは言い替えれば、クシャルダオラ陽動班の人員が一人削られたという事。即死級の攻撃を放つ歴戦王相手にこの【一人】はかなり大きい。挑発の装衣を着ている者は容赦無くその脅威に晒される。フィールドの一角、限られた範囲の中でクシャルダオラをその場に留まらせなければならない。その状況では当然、被弾してしまう事がある。まして彼女らはガンナー。一撃で命を落としかねない死と隣り合わせの陽動である。
『隊長!あちさんたちがキツそうです!』
『うん!…師匠!無理を承知でお願いします!』
そう言って、隊長がおーさんに出した提案は、おーさんが二つのパーティーを行き来する、というもの。
同じフィールドにいたとしても、広域化のスキルはパーティーメンバーにしか働かない。今おーさんの回復とバフを受けれるのは、隊長、文鳥くん、俺のイヴェルカーナ討伐班だけである。キクセアさんを除くと人員の比は4:3。これを3:3:1にする。おーさんが遊撃の1になり、状況を見て二つの班に入り、サポートをするという作戦だ。この作戦をやる場合、おーさんは常に走り、笛を吹き、戦い、回復もしなければならない。体を誰よりも酷使する。年老いたハンターの彼には厳しい役割である。だが、おーさんはグイッと強走薬を飲み干すと
『ガハハ!任せい!まだまだ若いもんには負けんわい!』
と笑い飛ばし、まるで水を得た魚の様にクシャルダオラ陽動班の元へ走っていった。王冠の縁からカルデラ内を見ていたナミは、自分の無力さに打ちひしがれていた。
ハンター養成学校を首席で卒業し、古龍観測隊に幹部候補で入隊した。父も母も心配してくれたが、とても喜んでくれた。自分が懸命に努力してきた事が実を結んだ気がした。誇らしかった。配属された場所でも頑張っていこう!とキラキラしていた。希望に満ち溢れていた。
だが現実はどうだ?今の私は?隊長や先輩の顔色をうかがい、言われるままに動く駒。同じ隊に所属しているだけで、それぞれが【我】を唱える。私達は仲間と言えたのだろうか?そして、隊長が眠る前に言いかけた言葉………。結局、アレが今の私の答えなのだろう。この隊に配属されて私は何をやってきた?これが望んだ未来だったか?子供の頃からずっと大切に持っていたモノを、私はいつの間にか何処かへ置いてきてしまった様な気がする。
へたり込んで雪を強く強く握りしめるが、まるで自分が何も手にする事が出来なかったかの様に溶けて無くなった。
カルデラ内に目を向けると、雪山支部の人達が懸命に戦っているのが見える。皆、仲間のために必死に戦っている。悔しさ、惨めさ、情けなさで涙が出た。でも、一番大きかったのは【羨ましさ】だった。私もあんな風に信頼し合える仲間が欲しかった。あの男性が恥ずかしそうに仲間の事を語るのが羨ましかった。私もあんな風に仲間のために戦いたかった!私も……あんな風に………………ッ!隊長が考えた作戦は上手く機能していた。ただ、この作戦は大きな危険を孕んでいる。
戦略を練る場合、除外しなければならない要素がある。それは【運】によるものだ。作戦の成功を運に委ねてはならない。運が良い方に働いた場合は良い。だが、悪い方に働いた場合、誰かが犠牲になる。最悪な場合、全滅する。
この作戦の大きな運要素は、おーさんの【満足感】というスキルだ。このスキルはLv3だと飲食するアイテムが75%の確率で消費せずに済むというもの。75%を引き続ければ無限にアイテムが使える。反面、25%を引き続ければアイテムはどんどん無くなり、死にスキルとなる。広域化で仲間を回復できるアイテムは回復薬G、青キノコ、サシミウオ、大サシミウオだ。回復薬も有るが、大抵の場合調合分として扱われる。この四種の回復量は並であるため、一度の回復で二回以上使用する事が多い。その都度25%の抽選を突破しなければならない。
アイテムポーチには限界が有り、サポートカリピストの場合は秘薬は持たず、調合分を含む先程の四種を上限まで持っていく。ポーチに余裕があれば生命の大粉塵が加わるくらいか。
おーさんが持っていける回復アイテムは1パーティーなら余裕がある。しかし、2パーティーとなると足りるか、が、かなり怪しい。そしてまた一つ、回復薬Gが消費された。
続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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980
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:31
ID:bpVzerGo
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第二十七話 一言之信
彼は走った。本当に守りたいモノを守るため、必死に走った。悲運にも四分の一を多く引いてしまい、回復アイテムは残りわずか。それでも自分にできる事を全うするため、彼は走り続けた。
あの日、言えなかった言葉がある。本部の若いハンター達にバカにされた日、ワシのために弟子や隆くん、文鳥くんが怒ってくれた。言葉を発してはいないが、副隊長やキクセアくん、リタ嬢ちゃんも怒ってくれておった。言わなくても伝わってきた。バカにされた事など、どうでも良くなった。そんな事より、皆の気持ちが嬉しかった。ワシはこんな良い仲間の側にいれる事が嬉しくて堪らなかった。
なのに、ワシは【ありがとう】の一言が言えなかった。歳をとって涙腺が緩くなり、あれ以上喋ろうものなら涙を止められなかっただろう。ダメだなぁ…ガキの頃の様に素直に【ありがとう】が言えなくなっちまってよぉ。なんか恥ずかしくなって逃げちまった。バカだよなぁ。ワシはハンターになってから、ずっと操虫棍を使ってきた。力でモンスターを倒してきた。回復なんぞ二の次の戦闘狂だった。仲間と一緒になって狂った様に狩りに明け暮れた。そんなワシに憧れるハンターが達が現れ始め、一緒に狩りに行く様になった。だが、彼らは未熟で力尽きる者も出た。生命の大粉塵の所持数には限界がある。回復できずに仲間を失う事もあった。彼らにも家族がいる。家族の死を聞いて泣き崩れる姿を何度も見てきた。その頃から自分の戦い方に疑問を抱く様になった。
最初は【広域化】を試しに使ってみただけだったが、効果は一目瞭然だった。明らかに仲間を失う事が少なくなった。ならば【早食い】を入れてみよう。【満足感】も要るな。【キノコ大好き】は…。とスキル構成が大きく変わっていった。そして、旋律で味方を強化できると知り、武器を使い慣れた操虫棍から狩猟笛に変えた。
バカなワシは旋律を覚えるのにとても苦労したが、その甲斐あってワシと一緒にクエストに行く者は死ぬ事が無くなった。仲間を守れる事、その家族に悲しい思いをさせずに済む事が嬉しかった。
【仲間を守るサポートカリピスト】
回復や旋律だけではダメだ。ぶっ飛ばしや傷つけ、攻撃にも参加しなくては足を引っ張る。そのために立ち回りを試行錯誤した。楽しかった。【ソレ】がいつしかワシの生き甲斐になっていた。だが、時代は変わる。サポートカリピストやヒーラーと呼ばれる者は世間から疎まれる様になった。火力盛りのスキル構成で早く討伐するスタイルが主流になり、ワシらの居場所は無くなっていった。
ワシも年老いた。ハンターも限界だと言い聞かせて、次の任務を最後に引退しようと決意し、サポートカリピストが輝くクエストを受注した。
【極ベヒーモス討滅戦】
ワシの花道を飾るクエストだ。誰一人死なせる事無くクエストを成功させる。そう心に決めて挑んだクエストが、ワシの運命を変えた。やりきった…。宣言通り、誰も死なせる事無く討伐する事ができた。自分の中で【ああ…終わったんだな】と思いにふけっていると、一緒にクエストに行った若いハンターから声をかけられた。驚く事に弟子にして欲しい!と言ってきた。何度も断ったが、彼は諦めなかった。渋々、自分が培ってきたモノを教え終わるまで、と言い、受ける事になった。参ったなと思いつつ、その反面で少し嬉しかった。
彼はとある隊の隊長をしていて、ワシは一時的にその隊の隊員となり、今いる皆と出会う。本当に気の良い連中で、皆といる事が楽しかった。年老いたこんなワシを慕い、頼りにしてくれる事が嬉しかった。そんな彼らを守れる事が幸せだった。
ワシが人並みに人生を歩んで結婚していたら、彼らくらいの息子や娘を持っていたかもしれない。どこか、自分が父親になった様な気がした。いつの頃からかこの隊が…いや、皆がワシの【生き甲斐】になっていた。皆はワシにとって【家族】なんだと思った。
あの日、皆がワシに【救われている】と言ってくれた。嬉しかった。でも本当は違う。本当に救われているのはワシの方なのだから。こんなワシに生き甲斐を与えてくれた。守るべき者を持たせてくれた。皆には感謝してもしきれねぇ…だから!ワシの家族は誰も死なせるわけにはいかんのだ!肺が張り裂けても良い!明日歩けなくなっても良い!今はただ走れ!
>>982に続く…。
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981
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:32
ID:bpVzerGo
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>>951 [ 第一話 ] はじまりの雪
>>952 [ 第二話 ] ももちゃん(と俺)の苦労
>>953 [ 第三話 ] 縁起物
>>954 [ 第四話 ] 需要と供給
>>955 [ 第五話 ] 美女と野獣
>>956 [ 第六話 ] 一子相伝
>>957 [ 第七話 ] 異変
>>958 [ 第八話 ] お昼ごはん
>>959 [ 第九話 ] エンカウント
>>960 [ 第十話 ] 隆、キレる(表)
>>962 [ 第十一話 ] 隆、キレる(裏)
>>964 [ 第十二話 ] 活路
>>965 [ 第十三話 ] 千変万化
>>966 [ 第十四話 ] 個性と無個性
>>967 [ 第十五話 ] ミーティング
>>968 [ 第十六話 ] 呪い
>>969 [ 第十七話 ] 本部のエリート
>>970 [ 第十八話 ] 時代遅れ
>>971 [ 第十九話 ] 過程
>>972 [ 第二十話 ] 解き放たれた龍
>>973 [ 第二十一話 ] 器
>>974 [ 第二十二話 ] 心意気
>>976 [ 第二十三話 ] 隊長たる者
>>977 [ 第二十四話 ] 挑戦者
>>978 [ 第二十五話 ] 最強の盾、最強の矛
>>979 [ 第二十六話 ] 陰と陽
>>980 [ 第二十七話 ] 一言之信
>>983 [ 第二十八話 ] 屍の願い
>>985 [ 第二十九話 ] 奇跡の上とは
>>994 [ 第三十話 ] 百人百様
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982
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:33
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強走薬はとうに無くなり、それでもおーさんは走る。息は切れ、足にも限界がきていた。手元に残る回復アイテムはサシミウオが一つ。コレが無くなれば、仲間を回復する事ができなくなる。もう仲間を守る事も叶わなくなる。四分の三を引き続ければ良い!と言い聞かせ、走り続ける。だが、無情にも四分の一に当たる。回復アイテムは底をついた。
その絶望を払い除ける様におーさんは走った。走れ!ワシが盾になって仲間を!家族を守るんだ!
自己犠牲。自分の体を盾にするため、仲間の元へ走るが、体が寄る年波には勝てず、足がもつれて転倒する。倒れる時、まるでスローモーションの様に視界が動く。伸ばした手は仲間に届かない。もう守れない。それでも伸ばさずにはいられなかった。
悔しい!ワシは本当に守りたいモノを守れないのか!なんと情けないハンターか!どれだけ歯を食いしばっても、悔しさで視界が歪む。守れなくなる事、失う事を認めたくなくて目をつむった。地面に倒れると思われたその時、誰かに抱きとめられた。少し甘く良い香りがした。驚いて目を開けると彼女はニコリと笑った。
『…ゼェ…ゼェ…ワシが…ワシが、盾に。…今…行くから…!』
『あらあら、おーさんらしいわね^^』
そう言って、ワシを地面に座らせ、彼女は肩がけのバッグを渡してきた。
『さっき渡しそびれちゃって。【秘密兵器】。可愛いでしょ?このバッグ。あちちゃんに貸してもらったの^^』
何かわからず、失意の中バッグを開けると涙が溢れた。止められなかった。戦闘の真っ只中、声にならない声を上げて泣いた。バッグの中には調合分を含めた回復薬G、青キノコ、サシミウオ、大サシミウオ、生命の大粉塵、そして強走薬がいっぱいに入っていた。
【これで皆を守れる】【家族を失わずに済む】
まるで、このバッグが皆の命であるかの様に抱きしめて泣いた。背中に添えられた手の温かさを感じながら。グイッと強走薬を飲み干す。
『おーさん、もう花粉症は治った?^^』
『おお!今とびきりの薬飲んだからな!ガハハ!』
『フフフッ、良かったわ^^』
『リタ嬢ちゃん、その………ありがとうなぁ!』
『どういたしまして。じゃあ、皆の事、任せますね^^』ふと、極ベヒーモス討滅戦で自分が言った言葉を思い出した。あの日、ワシはその言葉を自分の花道を飾るために使った。だが、今日は違う思いを込めて使おう!胸いっぱいに大きく息を吸い込み、腹から声を出す。神か、自分か、仲間にか。いやその全てに誓う様に叫んだ。
『心配するな!お主らは誰も死なせはせん!!!』
続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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983
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 00:37
ID:bpVzerGo
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第二十八話 屍の願い
おーさんはある違和感に気づいていた。さっきリタと言葉を交わした中にある確かな違和感と得も言われぬ不安。だが、ソレが何なのかはわからなかった。ハッとして、今はやるべき事に集中しなければならないと首を振って、自分の責務に戻った。
リタは戦闘が始まって何度か繰り返す事で、ある事に気づいた。最初は小さな違和感。そして確信へと変わる。それは挑発の装衣を着るタイミングで起きる。あちさんが装衣を脱いで、自分が着る時。その逆もまた然り。その敵視が外れるほんの数秒に、クシャルダオラの敵視は必ずイヴェルカーナに向けられる。つまり【クシャルダオラにとってイヴェルカーナは倒すべき敵】という事。理由はわからないが、まず間違いない。
コレが良い方へ働けば…と考えていた時、想定内の悪い事が起きる。挑発の装衣が二人とも使えない状況に陥った。コレはキクセアさんが抜けた事が大きな要因である。
挑発の装衣は効果時間が180秒、再使用までは300秒。三人で囮を代われば途切れる事はない。しかし、キクセアさんがネルギガンテの相手をする事になり、クシャルダオラの陽動を自分とあちさん、ももちゃんでしなければならなくなった。
ここで重要になるのがスキル【整備】。スキル構成において、どの武器種にも言えるのは、武器ごとの必要スキルや会心スキル、火力スキルを積んだ後の【残りの枠をどう使うか】である。その代表的なスキルが【整備】と【精霊の加護】。この二つのスキルは二者択一の傾向にある。【整備】は快適な狩猟をするためのスキルで、どちらかと言うと火力に貢献するスキルだが、【精霊の加護】は言わずもがな、生存スキルだ。
リタは整備Lv5を積み、あちさんは精霊の加護Lv5と整備Lv3。整備Lv5の場合、再使用までが50%短縮され150秒。整備Lv3の場合は30%短縮され210秒。リタが装衣を着て、あちさんが脱ぎ、次にあちさんが装衣を着る場合、60秒の空白が出来る。そこをももちゃんの大盾挑発でなんとか凌いできたが、クシャルダオラの行動によってはスムーズに着脱できない場面もある。その数秒が積み重なって出来てしまった完全なる敵視解除状態。
予想通り、クシャルダオラは標的をイヴェルカーナに変える。ずっとイヴェルカーナを攻撃できなかったストレスと囮をしていたハンター達は自分にとって【害は無い】と判断したクシャルダオラは、ブレスを溜め始める。リタは【ついにきたか】そう思った。今、あのブレスをイヴェルカーナに撃たれたら、三人もタダでは済まない。ならば、やるべき事は一つ。
イヴェルカーナ討伐班も必死に戦っていた。集中力を切らさぬ様、常にイヴェルカーナの動向を注意深く見て攻撃していた。しかし、その集中力が仇となり、クシャルダオラのブレスに気づけなかった。
『隊長ぉー!逃げてぇー!』
あちさんの叫び声にハッとした三人はクシャルダオラの方を見て、その状況を理解した、が、時すでに遅し。赤い光を纏ったブレスが、三人がいるイヴェルカーナの方へ放たれた。
『僕…帰ったら結婚するんだ…』
『うわああ!隊長が生きる事を諦めたッスー!』
『二人共!納刀して緊急回避……ッ!?』
二人に指示を出そうとした時、ブレスの弾道上にリタさんが現れる。彼女はこちらをチラッと見て笑い、ブレスの方へヘビィボウガンを向けた。その姿を見て、おーさんは違和感の正体に気づいた。
【じゃあ、皆の事、任せますね】
そう。まるで自分の事が含まれていない様な言葉だった。
『ぐうぅぅう!このボンクラハンターが!』
おーさんは自分を責めた。
こうなる可能性にあやつは気づいたおった!自分が犠牲になる事を覚悟していた!何故気づいてやれなんだ!何故!!!
もう、おーさんがリタの代わりになる事は不可能だった。
>>984へ続く…。 -
984
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 07:04
ID:cMAhsZqI
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彼女は生きる屍だった。若い頃、希望に満ち溢れ、輝いていた日々を過ごしていた時、彼女は全てを失った。それは突然だった。信じていた友に利用され、裏切られ、ゴミの様に捨てられた。その時の彼女の【全て】は全部奪われた。
絶望なんて簡単な言葉では終わらせられないものだった。裏切られ、捨てられるだけの人生なら、自分は何のために生まれた?自分の命に何の意味がある?部屋の片隅で塞ぎ込んだまま、答えの出ない自問自答を繰り返した。そして、心が壊れた。
彼女は何も考えずに済む狩りに没頭した。いや、現実から逃げたのだ。死んでも良い。だから無茶な戦い方をした。狩って、狩って、ただ無心でモンスターを狩りまくっていたら、いつの間にかランクはカンストし、強さだけを手にしていた。
何も感じなかった。こんな強さなんて望んでいなかった。どうでも良かった。無表情で無感情。鏡に映った自分は人と呼ぶには怪しいモノだった。
『何だコレ?』
可笑しくなって笑った。嬉しい、楽しい、ではなく、自分がなんともこっけいな存在である事をまるで他人事の様に笑った。それから彼女は笑顔という仮面を被る様になった。心の闇に蓋をする様に。作り笑いを。いつ死んでも良かった。でも最後に、自分の命に何か意味が欲しいと思った。それはとても小さな願い。そしてとても悲しい夢。それからは終わりを探した。ずっと一人で戦ってきたのを止め、いくつかの隊に入ってみた。仲間を大切にと唱える隊では拡散弾や竜撃砲で吹き飛ばされ、ハンマーやチャアクにかち上げられ、ランスに突進され、味方に何度攻撃されても、彼女は笑っていた。別の隊では【何もできないリーダー】の尻拭いをいち隊員の自分がずっとさせられていた。それでも彼女は笑っていた。人間なんて、どうせこんなものだと全てに諦めていたから。
また一人になった彼女は隊員募集の掲示板の前にいた。そこで一つの募集に目が止まった。やたら緑色が使われたその募集は、とても稚拙な文章だった。しかも、あのクシャルダオラが大好きとまで書かれていた。この人もどこかで狂ってしまった人なのだろうか、と興味を持ち、入隊する事にしてみた。【ソコ】で彼女はようやく見つける。いつか来るであろうその時を。
【ソコ】は居心地が良かった。おバカをしつつも隊の輪をしっかり考える隊長、自分を姉の様に慕ってくれる明るくて可愛い副隊長の女の子、気苦労の絶えないしっかり者のまとめ役、仲間思いすぎるオジサン、筋肉思いすぎる筋肉、慌てん坊の新米くん、気が利く猫ちゃん。温かいと思った。自分が少し人に戻れた様な気がした。今思えば、掲示板の前にいたのは、誰かに救って欲しかったのかもしれない。終わらせて欲しかったのかもしれない。ここなら…。彼らのために…。そう思う様になった。真正面から飛んでくる終わりを目の前にしても、何も怖くなかった。ようやく願いが叶う。たった一つの願いが。走馬灯の様に皆との思い出が目の前を通過していく。どれも全部覚えている。ふと
ああ…楽しかったな…。…………もっと
その時、彼女は気づいた。それに続く言葉を。心の奥底に芽生えていた、もう一つの切なる願いを。
もっと、皆と一緒にいたかったな
『ちょっと遅かったなぁ。こんな時に気づくなんてバカね^^』
と笑い、彼女は引金を引いた。
【生きたい】という心の声に気づいた彼女は赤い光に包まれた。続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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985
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 07:17
ID:cMAhsZqI
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第二十九話 奇跡の上とは
頬に降ってきた雪の冷たさに、ゆっくり目を開く。おぼろげにだが六つの人影がこちらを見ていた。徐々にその輪郭はハッキリし、自分がまだ生きている事がわかった。
『ディダアァざあああぁぁぁぁぁん!!!』
あちさんが抱きついてきて大号泣する。
『うわあああぁぁん!良かったよお!生きてたよお!良かったよおおぉー!』
私のために泣いてくれる人がいる。
『良かった!リタさん!本当に良かった!』
私が生きてる事を喜んでくれる人がいる。
『なんちぅ事するんだ!このバカもんが!』
私の無茶を叱ってくれる人がいる。
嬉しい…私にはこんなに素晴らしい仲間がいる。
『うえぇぇぇん…リタさん生きてるよぉ…あったかいよぉ、良かったよぉ、うぇぇぇん』
『ありがとう…あったかいね。生きてるって素敵ね…』
精一杯の声を出した。力を振り絞って、胸で泣く彼女を抱きしめ、頭を撫でた。
その姿は姉が妹をあやすように。まるで本当の姉妹みたいだった。
『うえぇぇん…良かったよぉ、あったかいよぉ、やわらかいよぉ、グスン』
彼女が落ち着くまでずっと抱きしめていた。その温もりを、命の温かさを感じながら。リタが助かったのは、いくつもの奇跡が重なったおかげだった。
まず、彼女がブレスを撃って爆発を誘発させた事。撃った弾が徹甲榴弾だった事。そして爆発地点までの距離があった事。キクセアがブレスの前にネルギガンテを撃退した事。一番大きかったのは彼女がいた位置。そこは彼女が三つの班に属するギリギリの位置だったのだ。それは畳一畳分程の空間。そこに立っていた事。おーさんがその時、クシャルダオラ陽動班に属していた事で、彼女はイヴェルカーナ班にもネルギガンテ班にも属する事ができた。つまり、その時、遊撃はおーさんではなくリタだったのだ。おーさんは口いっぱいに大サシミウオを、他の五人は生命の大粉塵を使用した。六人は爆発を回避するのではなく、自分の被ダメージよりも彼女の回復した。そして、その回復が六人同時だった奇跡。それがもし0.1秒でもズレていたら彼女は助からなかった。最後の奇跡は、爆発後に倒れている彼女にトドメをさそうとしたイヴェルカーナにクシャルダオラが襲いかかった事だ。
二頭が争う隙にリタを抱え全員カルデラ内から避難する事ができた。結果として、最後はクシャルダオラに助けられた形になった。
偶然が重なる事を奇跡と言うなら、奇跡が重なる事は何と言うのだろうか…。『何やっとるんだホントに!おぬしから皆の事を任されたんだぞ!【皆】の中にはおぬしも入っとるんだ!ワシより早く逝くなんて許さんからな!わかったな!?』
『はい…ごめんなさい^^』
激怒するおーさんに嬉しそうな笑顔で返すリタさん。その笑顔は今までの彼女の表情とは違う、やわらかな温もりを感じた。
『リリリ!リタさぁーん!良かったぁー!』
『ッ!隊長はダメー!』
ゴスッ!
『ぐはぁ!』(ドサッ)
嬉しさのあまりリタさんに飛びつこうとした隊長を、あちさんがライトボウガンの銃床の部分で殴り、阻止した。それはもう綺麗なカウンターが隊長のアゴにキマッた。前のめりのヤバイ倒れ方した隊長はビクンッビクンッと痙攣して、やがて静かになった。
『フフッ、隊長はダメ^^貴方はあちちゃんのs『うわあああああああああああああああああああああああ!!!ななななな何!?リタさん何言おうとしたのー!!??』
『あら…?違うの?あちちゃんは隊長の事がすk『きゃああああああああああああああああああああああ!!!ちちち違うしー!全然そんな事ないしー!もおぉぉー!』
『なんじゃい副隊長。泣いたり、喜んだり、怒ったり。今日はずいぶん情緒不安定だな!ガハハ!』
『しらない!もぉーしーらない!』
笑いながらプンプンするあちさんを見つめるリタさんの目はとても優しかった。
隊長は魂が体から離れかけていたが、誰にも触れられる事は無く、放置されていた。リタさんに今の状況を一通り説明した。ネルギガンテは撤退した事やカルデラ内の二頭の争いはイヴェルカーナが優勢であるなど。
『とりあえずー、まずはリタさんとナミちゃんを帰還させるよー♪ナミちゃんはアタシが肩を貸すから、リタさんはキクセアさんお願ーい♪』
『……………承知した』
そう言うと、キクセアさんはリタさんを背負うためかがむ。そこへ、あちさんに手を貸してもらったリタさんが被さる形で乗る。
『……………!!!』……………?
かがんだまま動かないキクセアさんに俺が尋ねる。
『どうしたんですか?キクセアさん?』
『……………た、立てん…』
>>992へ続く…。 -
986
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 07:20
ID:cMAhsZqI
[編集]
そして何気に今回も満スレマジかとなりました( ˙꒳˙ )🍀
はたして1000はどなたの手に?前回スレはりんごさんが
しめていました( ˙꒳˙ )ありがとうございます🍀
今回もわたしは一足先に新スレ作るのに
ご挨拶は早めにさせていただきますね( ˙꒳˙ )🍀2スレ目もみなさんたくさんありがとうございます( ˙꒳˙ )🍀
また3スレ目を立てましたらわかりやすく
【お知らせ】させていただきますので満スレに
なり次第移動をよろしくお願いします🍀地獄の演奏会はこのスレにあとから書こうかなー\( ˙꒳˙ )/🍀
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987
名前:りんご【K】
投稿日:2020-10-22 07:40
ID:hUz2AqZE
[編集]
おはようございます🐔コケコッコー
昨日も楽しい夜でしたね🌙*.。★*゚
遊び疲れて朝までぐっすりでした( ˘ω˘ ) スヤァ…
地獄の演奏会、戻られてきてから笛使いの方達が横一列に並んでいるのかっこよかったです👍🏻
お話もまた楽しみにしていますᐠ( ᐢ ᵕ ᐢ )ᐟ今夜のジンジン狩り狩り⚡️も了解ですっ
導きのカンカンサボり気味なので
この機会にストックしたぁい(ノ゚ο゚)ノ オオォォォ- -
988
名前:りんご【K】
投稿日:2020-10-22 07:43
ID:hUz2AqZE
[編集]
あたるさん調整とスレ建て準備ありがとう🍀*゜
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989
名前:りんご【K】
投稿日:2020-10-22 07:47
ID:hUz2AqZE
[編集]
おーさん観察キットGETできてよかったですd(d´∀`*)グッ!
わたし、観察キットをスクショ撮る時の向き調整とかに使ってます📸わりと便利ぃ〜カミングアウト…
私もめちゃくちゃあると思います。瘴気の谷の環境生物
【ヘイタイカブトガニ】ヘンタイカブトガニだと思ってました。
(どんなやねーん)と心の中で笑いながら突っ込んでおりました(ノ∀≦。)ノぷぷ-ッ
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990
名前:りんご【K】
投稿日:2020-10-22 08:02
ID:hUz2AqZE
[編集]
あああーーーー!!!!(発狂)
先日たかさんにハロウィンの日はいつですか?と聞かれて10/30と言ってしまったのですが間違えてました!!!
カレンダーみたら10/31でした。
すみませーん(´•̥ _ •̥`)
忘れないうちにここに書いておきます!!!わたし、前にハロウィン1ヶ月間違えちゃって9/30にやってしまったことはあります(カミングアウト)
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991
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 08:15
ID:cMAhsZqI
[編集]
>>987 りんごさん
ジンオウガのぴょーん…びたん!が強力なので
油断は禁物ですが、出来れば今日は人数にもよりけりですが
「ペア戦」にして、競走もしようかな?と思います🍀
いつも通りの景品等は一切無し、優勝したら
「おめでとー!」他のみんなも「おつかれさまー!」の
ゆるゆるな競走にはなると思いますが( ˙꒳˙ )🍀
そうですね…ジンジン杯、とでも名付けますか\( ˙꒳˙ )/🍀というわけで。←また突然はじまります
【ジンジン杯】ジンオウガよ永遠に!
ペアで乱獲!わんちゃんパラダイスだ!\( ˙꒳˙ )/🍀を急遽思いつ…本部より指令がきたため開催します( ˙꒳˙ )🍀
(だいたい都合よく使われていく架空の本部図)ルールは簡単です、武器等なんでもありの
炭のイベクエわんちゃん(ジンオウガ)ペア狩りで
いっちばん早い!を目指して頑張る1日です\( ˙꒳˙ )/🍀
他のサークルの方やお客様でも「わたしらペアで参加します!」
大募集します、もちろん( ˙꒳˙ )🍀雪山支部の最速ペア……( ˙꒳˙ )ブンタカが濃厚…いや?🍀
予想屋あたるさんとしては「火力」でいうなら
きーさんが…んー、でもまさかの…あの人なんて…ことも…?
と、勝手な想像で楽しんでおります( ˙꒳˙ )🍀
(お前もちょっとは頑張れよ)
あたるさんとドンケツペアを組みたい方は
先に言ってくださいね( ˙꒳˙ )🍀決定戦だぜ\( ˙꒳˙ )/🍀
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992
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 08:18
ID:cMAhsZqI
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『だ、大丈夫ですか!?ネルギガンテとの戦いでどこかケガでも!?』
『……………違う…だが今は立てんのだ』
???
『じゃあ自分がリタさんを背負うッス!』
『キクセアさん無理しないでー♪文ちゃんお願いー♪』
『……………クッ!』
そう言って、あちさんが手を貸して文鳥くんの背にリタさんを移した。
『!!!』
文鳥は焦った。それと同時にキクセアさんが立てなくなった理由がわかった。
自分の顔のすぐ横にリタさんの顔があり、少し甘くてとても良い香りがする。香水などではない彼女自身の香りである。そして彼女のエメラルドグリーンの綺麗な髪が自分の頬と首に触れている。トドメに【むにゅう】と背中に押しつけられている二つの大きな柔らかい感触。彼女は今力が入らないため、容赦無くソレは密着する。補足すると、リタの重ね着はマムガイラで、鎧ではなく、見た目ドレスである。
【そういう】経験が無い彼にはあまりにも刺激が強すぎた。………???
キクセアさん同様に固まる文鳥くん。
『どうしたの?文鳥くん?』
『じ、自分も立てないッス…』
『ええー!皆どーしたのー!?』
『ごめんなさい…そんなに重かったかしら…』
『……………違う!違うんだ!』
『リタさん違うッス!謝るのはこっちの、コッチの方ッス!』
ここでピンとキタ。
『なるほど、ある意味【たって】ますね』
『はぁ、何やっとるんだおぬしらは…』
まったく…こんな時くらい生理的現象は抑えなさいっての。その後、ももちゃんが機転を利かせ、猫笛を吹いた。ユウの時に呼んだ【ネコタク】とは違った音色だった。しばらくして、八匹の猫が車輪の無い神輿のようなモノを担いできた。箱型の籠が載っていて、その側面には窓みたいに穴が空いている。中にはリクライニング式の座り心地の良さそうなゆったりしたソファが前後に二つあって、籠もソファも全てがモッフモフでフッワフワの毛に覆われていた。これが一部のオトモにしか呼べない通称【ネコバス】。都市伝説級のシロモノだ。
アイルー達がリクライニングを倒したソファにリタさんとナミさんを優しく運び、寝かせる。
『ももちゃん、猫ちゃんたち、ありがとう^^』
『あ、ありがとうございますぅ』
『ニャ〜♪』
『『『『『『『『ニャ〜☆』』』』』』』』
お礼を言われて嬉し恥ずかしアイルーたち。
そしてネコバスが発車しようとした時だった。
『ぎゃああああああ!熱ッ!あっつぅ!』
と死にかけていた隊長が生還する。と同時に首元から急いでネックレスを取り出す。そこには以前手に入れた【龍核結晶】が付けられていて、赤い光を放っていた。隊長が龍核結晶に触れた瞬間、光は強さを増して緑色へ変わる。その時だった。
『うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
絶叫した隊長は、空の何もない空間を見つめた。その目はまるで何かの映像を見ているかのように、せわしなく動いてる。
『隊長ぉー!』
心配そうに叫ぶあちさんの声は届いていない。しばらくその状態が続き、【ソレ】が治まると同じくして、龍核結晶の光も治まった。
『そっか………』
一点を見つめる隊長はポツリと呟く。
『だ、大丈夫ですか?隊長?』
『え?…あ、うん大丈夫!皆、今から変な事言うけど、ビックリしないで聞いてね』
『『『『『『……………』』』』』』
隊長の言葉に皆は冷ややかな視線を送る。ももちゃんは死んだ目の無表情で見ている。
『ななな、何さ皆して!その【いつも変な事言ってるお前が今更何言ってんだ?】的な目は!もも!顔!!』
『ええ、まあ事実ですし』
『うむ、自業自得だな』
『もう慣れたッス』
『……………いつも通りだ』
皆の言葉に【しゅん】とする隊長。
『で隊長ぉー、何言おうとしてたのー?もー皆慣れてるしー、驚く事なんて無いから大丈夫だよー♪』
『あのね…今から』
隊長はカルデラ内の二頭を見た。クシャルダオラが明らかに劣勢である。脱皮して間もない体は、硬いとはいえ、硬度はまだ最高に達していないのだろう。今まで効かなかったイヴェルカーナの攻撃でも、ダメージが通ってしまっているようだ。そして、ユウ達の攻撃も少なからず影響しているはず。このままでいけば、間違いなく………『クシャルダオラを助けに行くよ!』
『『『『『『はああああ!!??』』』』』』
続く。ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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993
名前:リタ
投稿日:2020-10-22 08:55
ID:PvJJKlAg
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隊長
(´・ω・)b承知しました☆
八話は次スレで載せますね -
994
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 09:23
ID:cMAhsZqI
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第三十話 百人百様
『あとで理由は話すから!お願い皆!手伝ってほしい!』
と深々と頭を下げる隊長。変な事を言うと前置きしていたが、変どころではない。討伐対象である歴戦王クシャルダオラを救う、など普通の人間には想像できない程の奇行である。かつ彼らにはクシャルダオラを助ける理由もメリットも何も無い。ギルドに属する普通の隊なら、考えられないし、そもそも隊員が許さないだろう。普通の隊なら…。
『ガハハ!またとんでもない事言い出しおったな!』
『まったくです(苦笑)。まあ【らしい】と言えば【らしい】ですけど』
『ホント困った隊長だよねー♪』
『普通ならあり得ないッス!』
『……………普通なら、な』
『さーて…どうやって助けましょうかあ』
『み、皆!ありがとう!』
そう。どうやら【ココ】は普通の隊ではないらしい。だが、ソレがこの隊の【普通】なのだ。
毎度隊長が無茶を言う。隊員は一瞬は驚くが、またかぁ…という風には受け流さない。必ず一度受け止める。彼らは隊長がどんな人間か知っている。嘘や冗談でこんな馬鹿げた事は言わない。さらに彼らは真剣な人の言葉を聞き流すような人間ではない。
思いを真っ直ぐにぶつけてくる人の言葉には、他人の心を動かす力がある。そして、隊長の言葉にはその力があった。『で、でも!そんな事したら…クエストは失敗しますよ?』
ネコバスの窓から顔を覗かせ、ナミが疑問をぶつける。彼女がいた隊なら考えられない事だろう。当然の疑問だ。
『?うん、いいよ』
『ええ!!??』
隊長がほぼ即答し、ナミが驚きを隠し切れず声を上げた。本部にいた彼女には【クエスト失敗は恥】という考えが押しつけられて、定着していたのだ。それが【普通】だと思っていた。だが、目の前の彼は、まるで【クエスト失敗の何がいけないの?】と言わんばかりの発言に、返す言葉を失った。
隊長は続けてこう言う。『失敗しても良い。逃げても良い。生きて、またチャレンジすれば良いんだから。何度だって諦めて良い。何度だって、立ち上がれば良いんだから。生きていれば、何回でもスタートラインは引き直せるんだからさ』
(こういう時はしっかりキメるんだよな、この隊長は)、そう思ったのは俺だけではないはずだ。あちさんが惚れた理由もこういうトコなんだと思う。
人の考えは一人一人違う。だからこそ【十人十色】や【千差万別】という言葉がある。十人の普通があり、千人の常識があり、万人の非常識がある。普通と異常は常に紙一重だ。
あたるは【クエスト失敗】の事を【負け】と思っていない。【ソレ】は彼にとって【勝ちへの途中】なのだ。隊長の言葉に感銘を受けるナミ。彼女には、今まで誰もそんな事を言ってくれる人などいなかった。【失敗しても良い】、その言葉は、彼女をどれだけ救ったのだろうか。ナミは黙って、隊長の事を見つめていた。
『あらー…あちちゃん、ライバル出現よ^^?』
『ええー!?って違ッちち違うしー!ぜぜぜぜんぜぜ全然関係ないしぃー!』そして隊長は何の迷いも無く【クエスト失敗】の選択をした。
ももちゃんがネコバスを発車させ、リタさんとナミさんは雪山支部の医療班の元へ送られた。
クエストから離脱した今の俺たちは【探索】の状態にあるため、パーティーを四人に絞らなければならない。そして、その四人でクシャルダオラの救難に向かう。残ったメンバーから誰が行くか決めなければならない。
【先程の件】を反省し、キクセアさんと文鳥くんが、並んで雪の上に正座している。男だから、気持ちはわからなくはない。二人共、目をつむり真剣に反省しているように見える。もう大丈夫だろう。
『クシャルダオラの救難には僕、隆さん、おーさん、文ちゃんで行く!くだものコンb…あ、いや!あちとももはリタさんとナミさんに付き添ってあげて!キクセアさんは医療班でケガを診てもらって!それじゃあ、行こうか!』
『今悪口言わなかったー?あとで問い詰めてやるんだからねー!ちゃんと帰ってきてよー!』
隊長の話が終わり、キクセアさんと文鳥くんが立ち上がり、ゆっくり目を開く。二人は目を合わせ、口角を少し上げうなずくと、それぞれの道へ歩き出す。(リタさん、めっちゃ良い香りしたッス!柔らかかったッス!最高ッス!)
(……………脂肪も、中々どうして良いモノであった)隆の思惑とは裏腹に、彼ら二人は反省していたのではない。【余韻に浸っていた】のだ。
これもまた十人十色である。続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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995
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 09:24
ID:cMAhsZqI
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第三十一話 覚醒
クシャルダオラには戦わなければならない理由が二つあった。どんなに傷つき、倒れそうになっても、その理由が鋼龍の体と心を支えた。
歴戦王同士の戦いは苛烈を極め、ハンターにとっては即死級の攻防が繰り広げられる。互いに体力を削りあっていたが、イヴェルカーナが優勢だった。ユウ達の攻撃によるダメージが、隆たちのイヴェルカーナに与えたダメージを上回っていた事。さらに脱皮後の防御力低下によって、これまでの戦いで効かなかった攻撃も命を削るものとなっていた事。通常個体のイヴェルカーナなら、鋼の鎧は攻撃を通さなかった。だが、歴戦王の攻撃力は通常個体の比では無いのだ。
地表から突き上げる氷塊にクシャルダオラが怯んだのを、イヴェルカーナは見逃さなかった。その場で飛び上がると同時に横回転する。上半身から生まれた遠心力を全身の筋肉を使って増大させ、氷の刃を纏った尻尾に伝える。その力を一点に集約させ、クシャルダオラの心臓を貫かんとした時だった。
『どぉおりゃあああぁぁぁあ!!!』
大剣による横からの抜刀斬りが尻尾の軌道を変え、イヴェルカーナ渾身の突きは、クシャルダオラの左前脚をかすめ、重殻と筋肉をえぐり取った。直撃していたら致命傷だったはずだ。一方、尻尾に斬りかかった隊長は、イヴェルカーナの攻撃力によって大剣ごとクシャルダオラの方へ弾き飛ばされた。
突然の邪魔が入り、激昂したイヴェルカーナは隊長とクシャルダオラをまとめて仕留めようとブレスを放つ、が、ブレスのライン状に俺が入り、盾で受け止める。
『隊長!そっちは任せましたよ!』
『うん!わかった!』
そう力強く返事をすると、隊長は立ち上がり、クシャルダオラの元へ走っていった。
頼むよ隊長!【ソレ】が失敗したら、俺たちは全滅の危機になるんだから。[カルデラ突入前]
『説得ですか!?クシャルダオラを!?』
『うん。僕が話をつけるから』
『こりゃあ、また…度肝抜かれたわい』
『本当に、大丈夫…なんですか?』
『大丈夫だから』
『『『……………』』』不安はある。だが信じるしかない。俺は今、俺のやるべき事を全うするだけ。しかし、さすがは歴戦王だ。隙が無く、砲撃を当てるチャンスが少ない上に、起爆竜杭を刺すタイミングが作れない。コレを刺せるか刺さないかで放射ガンランスの火力には雲泥の差が生まれる。なんとか!起爆竜杭を刺さなくては!と、ソレに思考が囚われてしまった時だった。
イヴェルカーナが首をすぼめ、溜め…なのか?と思った瞬間、首と体をぐるりと回して360度のブレスを放つ。俺とおーさんはかわし切れず、氷によって足を拘束され動けなくなる。追撃は続き、イヴェルカーナは飛び上がり、勢いよく地表へ冷気を放つと、その場所から三重に突き上げる円形の氷塊によって二人共吹き飛ばされた。
『ぐぅう…効く……』
以前の装備なら瀕死だったかもしれない。ドラゴン装備の耐久力に命を救われた。しかし、二人が吹き飛ばされた事で、今、文鳥くんがイヴェルカーナと一対一の状態になってしまっている!
早く戻らなくては! >>996に続く…。 -
996
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 09:25
ID:cMAhsZqI
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戦いの最中、文鳥は別の事を考えていた。
【変わりたい…】
今まで自分は皆に守られてばかりだった。前に行ったミラボレアス討伐任務でも、自分は自分の事で精一杯だった。そして、今回の任務においても、おーさんに回復をしてもらい、リタさんが命懸けで皆を守った。
自分は何をしているんだ?ルーキーという言葉は、いつしか【半人前】という意味に聞こえた。いや、先輩方が一人前のハンターなら、自分は何分の半人前なのだろう。悔しい。いつまでも守られてばかりの自分が情けない。【変わりたい…】
心の声は日に日に大きくなっていき、そして今…
人は自らに変化を望んだ時、踏み出す【第一歩】が大事だと言う人がいる。しかし、それは違う。人は新しい道を考えた時点で一歩を踏み出している。だが、後ろ足がまだ[今]に残っているのだ。そして、新しい道への不安や恐怖で、踏み出した足を戻してしまう。また[今]に戻ってきてしまうのだ。
本当に大事なのは【二歩目を踏み出せるか】である。自分のため、仲間のため、家族のため、栄光、金、名誉、理由は何だって良い。絶望を希望に変える勇気を待てる者が世界を変えられる。残った後ろ足で大地を蹴り上げろ!そうすれば、その勢いのまま、どこまでも走っていける!世界に変化を求めるならば、自らがその変化となれ!!!【変わるんだ!今!】
彼は大地を蹴り上げ、イヴェルカーナに立ち向かった。両手で握りしめた太刀で、仲間を守るために。
踏み込み斬り、縦斬り、突き、からイヴェルカーナの尻尾による突き刺しに合わせ、見切り斬り、さらに気刃大回転斬り!そして納刀し居合抜刀斬りに繋げる!止まらない!太刀はランスにも劣らないカウンター技を持った武器なのだ。コンボの中で攻撃力を上昇させ、一瞬の隙を狙い、大技を叩き込む。練り上げられた太刀使いは恐ろしく強い。止めどない打ち合いが続き、揃えたかのように攻防が途切れる。両者後ろに飛び退き、相手の様子を伺う。文鳥は太刀を納め、腰を落とし半身になる。左手は鞘を握り、その親指は鍔(つば)にあてる。右手は柄(つか)を握らず添えるのみ。口から吐く息は、イヴェルカーナの冷気によって白く染まり、まるで蒸気機関のように吐き出される。呼吸を止め、集中する。
イヴェルカーナが彼に向け突進した刹那、後ろ足で大地を蹴り上げ、瞬きの間に彼はイヴェルカーナを斬った!まさに一閃!一瞬で二太刀浴びせる居合抜刀気刃斬りに、イヴェルカーナがひるむ。走り出した彼は止まらない!気刃突きから胴体を踏み台にして高く跳び上がると、頭部めがけて太刀を振るう。握る太刀に思いを込めて。太刀最強の大技、兜割り!『俺が皆を守るんだ!!!』
全身全霊を込めた彼の一太刀は、イヴェルカーナの頭部を破壊し、さらに大ダウンを奪うという大きな勝機をもたらした。
続く。
ε(_ >>981 _ ´-`)_ もくじに戻るよー🍀
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997
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 09:32
ID:cMAhsZqI
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…ふぅ( ˙꒳˙ )🍀←昼間に1人でスレッドと戦っていた隊長図
トップコメント等、編集されています。
スレッド埋まり次第新スレ立てます。
(実は1回立てましたがややこしいが爆発して消しました。)1000は誰の手にー\( ˙꒳˙ )/🍀
気兼ねなくバンバン書いちゃってくださいね( ˙꒳˙ )🍀
夕方までにこちらのスレが埋まってしまった場合は
新スレは18:00以降に作成しますのでお待ちください🍀 -
998
名前:🍀 あたる【K】◆ZJb9Vfxk
投稿日:2020-10-22 19:05
ID:gsOn5XJE
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集会所開放します\( ˙꒳˙ )/🍀
21:55で閉めます🍀
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999
名前:りんご【K】
投稿日:2020-10-22 23:09
ID:QIA.SSY2
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今日もお疲れ様でしたᐠ( ᐢ ᵕ ᐢ )ᐟ
武器の練習も出来たしたくさんジンジン狩れて大満足です🐺
見事にスラアクのコンボが隊長にヒットしてました←そして居残り組で
虫棒で遊んでみよう〜😄と、なり4人で虫棒担いでジンジン行きました🐺💗
4人虫PTは初めてでしたのでとても嬉しかったです。たかさんの初めてのカナブンちゃん、どんな風に成長するのか楽しみにしてます👍🏻💓
今日も楽しかったーーーー!!!
ありがとうございますーーー!!!
また虫遊びしましょうεïз✨ -
1000
名前:りんご【K】
投稿日:2020-10-22 23:11
ID:QIA.SSY2
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ということで感謝の〆
3スレ目もよろしくお願いいたします。
続くεε=(((((ノ・ω・)ノ🍎
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